巻ノ八十九 水を知りその五
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「そうされるな」
「それはまた」
「意外に思うか」
「はい、どうも」
「院政じゃ」
これだというのだ。
「将軍より上のお立場になられるおつもりじゃ」
「右府殿はそれをお考えですか」
「そして他のこともお考えであろう」
「と、いいますと」
「江戸を中納言殿にお任せしてな」
秀忠、彼にというのだ。
「他の政をされるおつもりじゃ」
「といいますと」
「天下固めじゃ」
その政に専念するつもりだというのだ。
「それにじゃ」
「そうですか」
「うむ、だからな」
「将軍になられて間もないですが」
「より高い場所に行かれてな」
「天下固めに入られますか」
「太閤様は誤られた」
秀吉、彼はというのだ。
「そこはな」
「すぐに戦をされましたが」
「あれはよくなかった」
「だから今の様になったのですな」
「豊臣家がな」
「やはりそうですか」
「大和大納言様がおられれば」
昌幸は苦い顔で述べた、既に十年以上前のことだが。
「今の様にはなっておらぬ」
「戦にならずですな」
「太閤様を止めておられた」
秀吉が戦をしようと言ってもというのだ。
「必ずな」
「やはりそうされていましたな」
「そして政に専念されておられた」
「太閤様も」
「戦ではなくな」
そうなっていたというのだ、秀長が生きていれば。
「天下固めの為の。ましてやな」
「利休殿、関白様も」
「間違ってもじゃ」
「あの様にはならなかった」
「そうなっておったのじゃ、しかしな」
「右府殿はですな」
「太閤様とは違う」
秀吉、彼とはというのだ。家康は。
「その轍を踏まずにな」
「天下固めの政に入られますか」
「ただ江戸城を築かれ町をもうけるだけでなくじゃ」
それに留まらずというのだ。
「天下を治める仕組みを築かれる」
「それが右府殿のお考えですか」
「そうじゃ」
まさにとだ、昌幸は幸村に話した。
「あの御仁はな」
「天下を治めるですか」
「これまでの幕府よりも遥かに磐石に治められる様な」
「そうした仕組みをですか」
「築かれるおつもりじゃ」
「そこまでお考えなのですか」
「幕府が末永く続く様なな」
その治世がというのだ。
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