暁 〜小説投稿サイト〜
歌集「春雪花」
322

[8]前話 [2]次話



 過ぎ去りし

  日々を映すか

   朧月

 独り眺むる

    君のなき里



 何もなくなった家の中…幽かな朧月の淡い明かりが射し込む…。

 狭いと思っていた家…ガランとした部屋を見ると、あぁ…こんなに広かったのかと思う…。

 硝子越しに見える朧月…この部屋で見るのも終わりだ…。


 彼のいないこの小さな町…ここで寂しく見上げるのも…もう終わってしまうのだな…。



 惜別の

  荒ら屋に生うる

   しのぶ草

 君の傍えに

    ゆくと思へば



 良き思い出も悪しき思い出も…過ぎ去った日々の中へと流れ行く…。

 長年住み慣れた家…もう立ち入ることさえ無くなるとなると、やはり寂しさが湧くもの…。

 手入れのされない庭に雑草が生えていることさえ、もう見ることはないのだ…。

 あれもそれもと…惜しむことばかり…。


 たが…そう、彼の住む町に近くなる…少しの距離でも彼に近くなると思えば、そう辛くもあるまい…。




[8]前話 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ