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とある科学の傀儡師(エクスマキナ)
第81話 大事な欠片
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ん......
何で居ないの?
オレを置いて、何処に行ったの?
寂しいよ
戻ってきてよ

残される側の痛みなんか死ぬ程味わってきた筈だったのに忘れていた。
死ねば終わると思っていたし、自分が死ぬ事で喜ぶ人間が居ても悲しむ人間なんて居ないと考えていた。
ビンゴブックに載るという事はそういう意味だ。
世界中の人間が居なくなる事を待ち望み、常に命を狙われ続ける生活。

だが今はこうして制止し、悲しむ人が居ると再確認すると二の足を踏んでしまう。

「......」
サソリ警策は重くなった足取りでゆっくり踏みしめるように歩き出した。
この世界に来てからサソリは今まで経験した事がない事を経験してきた。

「それだけ大切に想っているのよ。仲間としてでなく......!」
サソリ警策が歩くのを止めてジッと食蜂を見上げた。
「.....それ以上言わないでくれ......未練が残るだろ」
「!?」

忍は影に生きる者
死して屍を残さず
歴史に掻き消されていく存在であるべきだ
その筈だった
そのように生きてきた

そして敢えて絞り出すように矛盾することを呟く。
「死んだ人間はもう戻らない」
それは今までの自分を肯定する事だった。
何十回、何百回試行した事だろうか......
人間と人形のはっきりとした違いを、明確な『命』についての定義を解明しようとしてきたが失敗してきた。

願っても
身体を壊してまで挑んでも父と母は帰って来なかった
この世界の乱数は残酷だ

******

もういい......
こやつをこんな風にしてしまったのは、ワシら砂隠れの悪しき風習と教えじゃ......

「誰ですの?」
白井と白ゼツが戦い、レベルアッパーに意識を取られた。
白い靄......いや霞がかった世界をキョロキョロしながら当てもなく彷徨っている。
時折、何処からともなく古いレコードのようにノイズが入った老婆の声が響いており、何かをしなければならないと白井自身を焦らせる。

くだらぬ年寄りどもが作ったこの忍の世界......ガー
かつて、ワシのしてきた事は間違......じゃった
しかし......最後の最期になって本来あるべき正しい事ができそ......じゃ
殺戮と暴力が支配する世界......孫をたす......られる

「?」
声は覚束なくなり半分以下の明瞭さしか保っておらず、論理もなにもかもが破綻している。
しかし、それは決して理性ではなく感情に訴えかけるような気迫を感じた。

孫を......サソリを
助けてやってくれ......
再び悪しき風習に......前に
助けてやってくれ
全てから解放されたババアからの後生の頼みじゃ......

「サソリ?サソリに何が
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