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マイ「艦これ」「みほ2ん」
第6話<意外と夕立も>
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夕立か。思わず振り向くと彼女は、いきなり正座を崩して足を投げ出していた。

そして手で顔を(あお)ぎはじめた。
「何だよ? その落差は……がっかりするな」

「もぉ、疲れたっぽい」
「そうか」

 だが直ぐに私は慌てた。
「おい、変に脚を立てるなっ……お前のスカートの丈! 短いんだからさっ」

「ぽい?」
自覚なし。

「危うく……」
そう言いかけて止めた。

『見えそうだったぞ!』 ……なんて本人を前にして言えないよ。

「無視、無視!」
私は慌てて夕立と反対側の壁を見る。傍から見たら極めて不自然な行動だな。

「疲れるけど」
彼女の声に、恐る恐る顔を上げる私。

夕立は相変わらず、のん気に手で顔を仰いでいる。この部屋は空調が効いてるんだが。

「もしかして緊張したか?」
彼女は扇ぐのをやめて、こっちを見た。

「でも、こういうのって初めて」
その澄んだ瞳で見つめられると、ちょっとドキッとする。

「なんか面白いっぽい」
私は心臓の動悸を誤魔化すように、おもむろに腕を組んだ。

 でも夕立って意外に能天気なようで、それなりに母親に気を遣ってくれていたんだ。
思わず声が出た。
「ありがとうな」

「ぽい?」
こちらを見る彼女。そんなに、つぶらな瞳で見るなよ。

「あまりジッと見つめるな。何って言うか……」
私も恥ずかしいとは言わない。

「……」
固まったように、こちらを見詰めている夕立。間が持たない。

苦し紛れに、私は言った。
「そうか、お前には姉妹艦は居ても家族は居ないんだよな」

「そうっぽい」
ふっと寂しそうな表情をみせて視線を反らせた夕立。

「……あ、悪かった」
家族のことは拙いか。

でも彼女は直ぐに髪の毛の先端をいじりながら続けた。
「司令とか皆が居るから……ちっとも寂しくないっぽい」

「あ、ああ……そうか」
私も配慮が足りなかった。

「済まなかったな、夕立」
反省。

「でもお前は、きちんと気は遣ってくれるし意外にしっかりしてるな」
「ぽい?」
またそれか……ちょっと拍子抜けするけど見直した。艦娘も見かけで判断してはいけない。

 もっとも彼女たちは戦場で射撃の複雑な計算を瞬時にしたり分刻みの作戦行動に加わったりする。艦隊作戦行動、即ち団体行動だ。一人の油断が全体の命取りになる。気遣いくらいは出来て当たり前か。

 やがて母親が戻ってくる気配がした。夕立は、慌てて姿勢を戻した。その姿は微笑ましかった。

「何だ、夕立も可愛らしいところあるんだな」
今度はストレートに言えた。

「……」
初めて恥ずかしそうな表情をした夕立。思わず仰け反りそうになる。

「待たせたなぁ」

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