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逆さの砂時計
Side Story
少女怪盗と仮面の神父 44
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た』。シャムロックが貴族の間で騒がれるようになった頃は多少気にしてたが、半年くらい前、あいつが「バーデルの商人殺しに義賊の被害者が混じってる」って情報を持って来た後でも、それほど重要視はしてなかった。でなきゃ、村に一人で残しとくワケ無いだろ? さすがにウェミアが暴行される所までは関知してなかったにしても、その後、アルフィンを連れた行商人の足取りは追っていたか、下手すりゃバーデル側の国境を越える寸前だったミートリッテも含めて、全員をさりげなく誘導してたんじゃないかと睨んでるぞ。私は。」
 七年前、「たまたま」自分が数日間の日程でネアウィック村を視察してた時にミートリッテが「偶然」侵入して来たなんて出来すぎてるし、マルペールの奴は十二年前、爵位剥奪こそ免れたが、あいつに相当キッツいお仕置きを貰ったおかげですっかり人格が変わったらしいからなぁとけらけら笑う王子に、言葉を失って立ち尽くす一同。
 つまり……王子の言う「あいつ」こそがエルーラン王子にリアメルティ領を継承させ、アルフィンが居る村へブルーローズを匿うように仕向けた首謀者だと。
 そして、七年前には王子とミートリッテを引き合わせたり、現在は暗殺者と成り果てていたイオーネ(アルフィンの関係者)が国境付近に襲来していた事さえ中央領を出ないままに把握し、王子に報告していた、と。
 「あの……エルーラン殿下? アーレスト様? どう聴いても、まともな人間には思えないのですが……お二人は一体、どなたの話をされているんですか?」
 王子の背中を正面に捉えたベルヘンス卿が、唇の端をひくつかせながら右手を挙げて問い掛けると
 「私の従兄妹だ」「殿下の従兄妹君ですよ」
 二人の男が揃って腹の底から大きな溜め息を搾り出した。
 王子の顔は見えないが、肩越しに窺ったアーレストは俯いていて、周囲の空気を数倍重くさせるどんよりした疲労感を醸し出している。
 「殿下の従兄妹君って……まさか! 噂に名高い「あの」公爵令嬢ですか!?」
 「本人も一応公爵だけどな。その「女神を愛し、女神に赦されて現代に生まれ落ちた、歴史上最後の女悪魔」だ」
 「外ではそんな呼ばれ方をしているのですか? 彼女」
 「他にも「アルスエルナの毒花」とか「茨の鞭姫」とか「極上の美姫・ただし、劇薬につき触るな危険」とか、いろいろ言われてるぞ。あいつの噂はもう、後から後から次々に飛び込んで来てキリが無い。初めてミートリッテの顔を見た瞬間には、思わず本気で「強く生きろ……ッ!」と切実に祈ったもんだ。ははは……」
 乾いた笑いを漏らす王子。
 そうですか、と生温い半眼で答えるアーレスト。
 眠っている三人と気絶している一人、王子の手前に立つ騎士以外は、全員キョトンと目を瞬いた。
 「……何故、ミートリッテ嬢?」
 「ん? ……そういや、ベル
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