Side Story
少女怪盗と仮面の神父 44
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義賊騒ぎの拡大を防げて超・便利ー! 程度のモンだったし。
ミートリッテを拾った時も、あ〜……これは絶対あいつが絡んでくるなあとは思ったが、どんな手を使ってくるかまでは予測してなかった。
それがいつの間にか、他国の暗部を丸ごと釣り上げる大手柄だぞ?
王都に帰ったら、私の勲章がまた一つ増えてるんだろうな。
肩の荷を一つ分下ろせると思ってただけに迷惑極まりない話だが、凡人の私達には抗う術など無い。今回の騒動は私を国内に留めておきたい狸と狐、人生を明るく楽しく彩りたい真正の化け物が予定した通りに流れてるだけ。
「選んだつもりが選ばされていたのかと嘆く気持ちは分からんでもないが、あいつに悪気とか少しも無いし、お前が自分の意思でミートリッテを選ぶと信じてるからこそ、あえて何も話さなかったんだ。潔く結果を受け入れろ」
「なにもかもすべてが、彼女の駒……ですか」
「そ。」
たとえば十一年前、有力な手札候補だったブルーローズを捕獲する為に、私が騎士見習い当時知り合った他方領の浮浪者達を義賊の被害者に仕立て、南方領へこっそり誘導してみたり。
失職者と浮浪者と南方領内での移住希望者が急増したせいで深刻な打撃を受けていた経済と保安面に頭を抱える各地の主や長達へ、それぞれの自警団再編による雇用創出をそれとなく促してみたり。
その流れで、ネアウィック村周辺を王族付きの騎士と騎士候補生達専用の小規模軍事訓練場に指定。
第二騎士団の小隊と、政治に参加する前で社交界に素性が割れてなかったセーウルを、社会勉強の名目で移住民の中に紛れ込ませて、新規の自警団に偽装させてみたり。
セーウルの護衛で付いて来た第三騎士団を、騎士候補生達の教官役として村の内外周辺へ配置。ウェミアの自殺騒動後に連れてきた元ブルーローズを監視させてみたり。
ハウィス以外をバーデルへと送り込んだ後は、セーウル達に定期連絡役を任せてみたり……とかな。
「これらを考えて実行したのは私だが、私に考えつかさせて実行するように環境を整えていたのは、間違いなくあいつだ」
「ブルーローズを隠す前には、既に関わっていた、と? その頃の私達は、王都どころか中央教会の敷地周辺からも出歩いていなかった筈ですが。何故そう言い切れるのです?」
「十三年前、政治への初参加を控えていた私に、初めて継がせる領地としてリアメルティ領を薦めたのが、あいつの父親だからさ」
「十三年前……? …………────っ??」
珍しく驚きを前面に出したアーレストの両目が、立ち上がったハウィスの足元で眠るアルフィンを捉えて固まる。
息を呑む神父を何事かと振り返って首を傾げた騎士達やベルヘンス卿も、全員同時にアルフィンを見て。
再び同時に、勢いよく、真ん丸な視線を王子へ向けて放り投げた。
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