Side Story
少女怪盗と仮面の神父 44
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誰かに命じて振るわせようが、苦痛の深度には薄皮一枚分の差もない。罰と言うなら、リアメルティ伯爵と別れて王都へ行くことより、こちらのほうが本命でしょうに」
アーレストに組み伏せられたイオーネとエルーラン王子が話している間、ミートリッテは半ば意識を飛ばしていた。
いきなり告げられた格好になる指揮者が、具体的にどんな立場であるかは理解できなくても、頭に『戦士の』と付けば、大体の想像はつく筈だ。
誰かが傷付くことを極端に嫌っている彼女からしてみれば、自分が聖職に就任するかどうかよりもずっと気になる言葉だろう。
なんですかそれは? などと問い返さなかったのが不思議でならない。
聞こえなかったわけでもなかろうに、と首を傾げる。
「おそらく、聖職者への警戒心と猜疑心が先に立って、聞き慣れない言葉は無意識に受け流してしまったのでしょう。顔を合わせるたびに全身全霊をもって近寄るなと威嚇していましたし。もしかしたら、アリア信仰と私は、殺傷行為並みに嫌われているのかも知れません」
何度か本気で殴られそうになりましたしね……と、イオーネを抱えたまま器用に両肩を持ち上げて、苦笑いと同時にため息を零すアーレスト。
殴るってなんだ?? とベルヘンス卿が驚いて目を剥けば、ベルヘンス卿と背中合わせに立った王子が、楽しげに肩を揺らした。
「お前があいつ以外の女に距離を置かれるとか珍しいな。嬉しいだろ?」
「……余計なお世話です」
「相変わらず、素直じゃないなぁ」
「私のことなんか今はどうでもいいでしょう。それより、貴方はいつから、どこまでを見通していたのですか。本件は彼女が首謀者だと仰いましたが、私は事前に説明なく派遣されています。彼女も中央教会に籍を置いて以降、王城やアリアシエルへ数回足を運んだ以外、王都からは一歩も出なかった。なのにどうして私がミートリッテさんを選ぶ前提で配置されているのです。私の到着が一日二日遅れていたり、ミートリッテさんを選ばなかった場合はどうするつもりだったのですか。いくら私でも、不適格者に防衛の要である我が身を預ける愚は冒しませんよ」
「だが、お前は現にこうしてここに居て、バカ娘を選んだだろ?」
ジト目で自身を睨みつける神父に、王子は頭の横でひらひらと手を振って答えながら、黒い森の奥へとまっすぐに視線を注ぐ。
どんな形で始まるか分からない暗殺者達との戦闘に備えているのだろう。
今はまだなんの兆候も見られないが、その向こう側では確かに壮絶な命の奪い合いが続いている。
「私も、お前と大体同じだ」
十一年前当時の考えなんて、せいぜい、いつかはブルーローズを狙う奴が現れるんだろうなー。そいつらも取り押さえとかないと後々マズイよなー。預かった領地が人通りの少ない国端で良かったー。
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