巻ノ八十八 村上武吉その十三
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「ですから」
「そうか、やはりな」
「やはりこのままいけば」
「十年少しでな」
「起こりますか」
「茶々殿がまずいことをされてな」
そのうえでというのだ。
「そうなる」
「ですな、やはり」
「あの方は静かにされるべきじゃ」
こうもだ、村上は言った。
「大坂の為にも天下の為にも」
「ですな、どう考えましても」
「豊臣家を思われるなら」
「大人しくされるべきで」
「それが出来ぬ方だからじゃ」
「危ういですな」
「あれでは滅びぬものも滅ぶ」
こうまでだ、村上は言った。
「だから我等が殿も今度戦があってもな」
「豊臣家にはつかれぬのですな」
「負けが見えておるわ」
それこそ誰の目にもというのだ、村上だけでなく彼の主である毛利輝元もそう見ているというのだ。
「既にな」
「勝てる筈がない」
「それでは天下の大名は誰もつかぬ、しかし」
「はい、それがしは」
「そうされるか」
「そのおつもりです」
「勝つのは難しくとも何か出来るやもな」
村上は幸村の顔を見てこうも言った、彼のその強い勇と智そして義を備えた強い光を放つ目を見てだ。
「相当なことが」
「では」
「それを成し遂げる力を授けるのも面白い」
村上は自分が切ったその魚を食べつつ笑みを浮かべて述べた。
「ではな」
「はい、お願いします」
「その様にな」
「それでは」
幸村も応えてだ、そしてだった。
まずは刺身を食べた、そうして食事の後はじまった海野の修行を見ていた。海野は村上と共に海の荒行に励んだ。
鮫の群と闘い渦潮の中にも飛び込む、嵐の中を泳ぐこともする。
しかし全て泳ぎきり生き抜く、村上もその海野を見て言う。
「それだけのことが出来るとは」
「はい、それはですか」
「見事じゃ」
まさにというのだ。
「わしの見込み以上じゃ」
「そう言って頂けますか」
「うむ」
夜修行の後で話した、それこそというのだ。今は村上の屋敷で幸村と三人で酒を飲みつつ話をしている。
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