第4話<解放感っぽい>
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がら黙々とハンドルを回し続けている。二人とも基本的に無口でジェスチャーゲームをやっているみたいだ。絶妙なのか違うのか? よく分からない。
車は順調だから取り敢えず、うまくいっている……のかな?
夕立は、さっきからずっと金髪を振り乱しながら外の景色を見てる。
つい私は彼女に声を掛けた、
「境港なんて大して珍しい物も何もない町なんだけどな」
「ぽい? ……でも楽しいっぽい」
夕立は笑って応える。その屈託の無い返事に私は苦笑するばかりだ。
なるほど彼女は陸の上……鎮守府の外の世界が珍しいのだろう。普段の彼女が鎮守府から出る機会があっても、そこは大海原だ。水平線の彼方まで何もない。それに比べたら変化のある町並みの方が珍しいのも仕方がないか。
寛代が示した狭い路地に軍用車が入る。突然そこに私には見覚えのある景色が広がった。あっと思う間もなく、こじんまりとした平屋の前で軍用車が停まった。
既にかなり髪の毛がボサボサになっている夕立。何だか金髪の鬼婆にも見えるんだが。それは、まったく気にせず陽気に身を乗り出す彼女。
「ここっぽい?」
「ああ、ここだな」
ついに実家へ来てしまったか。急だけど誰かいるのかな?
髪の毛を直しながら目を大きく見開いて首をかしげている夕立。
「司令の実家って言うからぁ、もっと大きいかと思ったっぽい」
「別に司令だから実家が大きいとは限らないよ……ま、私の父親は空軍の軍人だったけどね」
「……!」
私の発言に、なぜか車内の全員の視線が一斉に、こっちを向いた。
「何だよ、その反応は?」
海軍の提督の父親がもと空軍の軍人だと、そんなに珍しいのかよ!
「ぽい?」
夕立のそれは力が抜けるって。いや、私だけでなく全員が脱力したような……。
でも、お陰で、今の私への艦娘たちの視線も消えたからホッとした。艦娘って人間には当たり前のことでも妙な反応をすることがある。正直、戸惑う。
人間の血縁関係とか習慣に関することは彼女たち艦娘には分かり難い世界だ。だから過剰反応したり無反応(無視)だったりするのは致し方ない。
取り敢えず皆の妙な反応は無視だ。私は、おもむろに車を降りた。
ジワジワと聞こえるセミの声が夏らしさを強調する。朝晩は過ごし易くなったとは言っても日中のアスファルト上は暑い。
髪の毛を直した夕立も私に続けて「よいしょ」と言いながら車の反対側から降りてきた。
「あれ?」
振り返ると運転台に鎮座している日向。
「お前は来ないのか?」
彼女は、すまし顔で答えた。
「私と寛代は念のため、ここ(軍用車)で待機しています」
寛代も同様らしく頷いている。
「あ、そうなの」
……さすが日向、用心深い。こ
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