外伝『魔弾と聖剣〜竜具を介して心に問う』―中章
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「――黒霞!」
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『銃』の引き金を引かれる前に、戦姫は竜具にて空間を一閃した。裂かれた空間からまるで墨汁のように『霧』を模した『受動式煙幕』を張る。こちらの霧は、敵からの衝撃等を受け止めることで『増旋消滅』を引き起こす。
銃声鳴り響く中、鉄砲玉が無慈悲に飛んでいく――
受け止められた『鉛玉』は常闇に飲み込まれ、ドス黒い煙を上げて消滅四散した。
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「全軍!火を飲み込む勢いで奮起せよ!」
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いわれるまでもなく、オステローデ水兵達は火を飲み込むような思いで、敵兵に食って掛かった。『過去』の黒船で蹂躙されたあの恨み――黒竜の化身が建国せしより続く、怨念に近いそれを果たすために――
黒船甲板の開口部から、乗組戦闘員と思われる集団が吐き出される。まるでイナゴの大群のように、オステローデの精鋭へ襲い掛かった黒船の海賊たちは、ジスタートの迎撃を受けつつも、銃を撃ちながら各地所定の位置に立つ。敵の集中砲火を浴びないよう、すかさず戦姫は散開の指示を出し、海賊を求めて走らせる。
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「――虚空滅彩!!」※8
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深紅と漆黒の滅波に彩られた大鎌を地面に突き鳴らし、鬼神を彷彿させる虚空結界が戦姫を中心として発生する。押し出された空間の圧力に耐えかねて、遠呂智の二つ名を持つ戦姫の『蹄−ハイヒール』は、機械仕掛けの鉄塊たちを瞬く間に『踏み散らかした』――
首をもたげた鉄の塊を睥睨して、戦姫は呼吸を整えた。
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(首長竜筒砲―アームストロングはこれで大体片付いたはずだ)
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本来、竜技は人に向けて放ってはならない。戦姫と成りしものならだれもが知っている暗黙の了解。
だが、相手が『機械仕掛け』なら、一切の躊躇はいらない。それがせめてもの救いだった。
闇竜の『牙』たる封妖の裂空。闇竜の『翼』たる虚空回廊。闇竜の『粧』たる黒霧。そして、先ほど繰り出したのは、闇竜の『蹄』たる虚空滅彩だ。
それから――戦姫は竜具を鮮やかに振るい、廻し、斬首刑の大判振る舞いを施していく。
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戦姫の武に慄くがいい――
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戦姫の舞に散るがいい――
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――竜姫将はここにあり!全員我に続け!――
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◇◇◇◇◇
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オステローデ全軍の指揮は異常なまでに高かった。だが、兵力で勝る黒船では元より『占領』はできない。もともと黒船に『速度規制』をかけるための奇襲なのだから、とりわけ占領する必要もないのだが――
黒船の船員は、やはり過去と同じ人間だった。切れば赤い血が流れ、恐怖に慄けば腰を抜かし、その辺の荒くれどもと大差ないごく普通の『人間』だった。
そのような雑魚は配下に任せ、戦姫たる自分は
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