外伝『魔弾と聖剣〜竜具を介して心に問う』―中章
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「レグニーツァのコバンザメが黒船にとりついたようだな」
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コバンザメとは、先述した甲胃魚号を指している。なるほど。あれほど小回りの利く運動性よしの船をそれに例えるとは――鬼神と称えられた戦姫らしいといえばらしいのだが。
しかし、その辺の巡洋魚で例えられると、レグニーツァもなんだか気の毒である。隣にたたずんでいるヴィッサリオンは盛大にため息をついた。
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「……黒船を『粉砕』するなら今か――戦利品にあの煌炎の揮船もついでにもらえないものか――」
「恐ろしい事をさらりという姫君ですな。言い争いの『火種』になるから自重してください」
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黒船のケツに火を焚きつけて、連環的に被害を与えたのち、3公国の全水軍で総攻撃をかける。そのためにわざわざ『弱く見せられる木造船で戦意の火をあおる』策を用いたのだ。※5
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「とはいえ、あの……『首長竜筒砲アームストロング』といったか?そろそろ黙らせておきたい頃あいだ。ヴィッサリオン、貴様も付き合ってもらうぞ」
「先ほどわたくしを連れ戻したと思い一転、戦姫をはべらかして死地に同行せよとは……これいかに?」
「勝利のカギは最後まで扉を開くまで取っておくものだが、使わなければ扉は閉じたままだ」
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温存と果敢の両極端の思考を持つ戦姫の判断は、本当の意味で正しいと思えた。そろそろ言ってくれなければ、ヴィッサリオン自ら申し出ようとしたところだ。先ほどヴィッサリオンを無理に連れ戻したのは、味方が黒船にたどり着くまでの自軍航行速度が失速するのを危惧したからだ。これでは策が成り立たず、ヴァルガ大河へ敵の侵入を許してしまい敗北してしまう。そうなれば瞬く間にジスタ―トは蹂躙されるのは目に見える。
しかし、黒船の牽制攻撃によるルヴーシュ撃沈ともなれば、その策さえも成り立たないわけで――ヴィッサリオンの、身を挺して鉄塊なる魔弾を切り裂いた『斬鉄』行動も正しいといえる。
この距離なら、黒船との接触でオステローデ、ルヴーシュ二国とレグニーツァの『挟撃』が可能だ。ある程度敵の速度に見切りをつけたら、あとは『無人機雷船』にぶつけて撃沈――それで終わりだ。
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「まもなく黒船へ『上陸』する!過去に祖国を蹂躙された恨みを!いまここで晴らすのだ!」
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黒船への上陸を果たす――ジスタートにとって、黒船の甲板は未知なる大陸そのものだ。
宝箱は?その中身は?足を踏みしめる鉄の『大地』には何があるのか?これを思わずして、『上陸』以外にどう表せというのだろうか?
そんな思慮と好奇心を打ち砕くかのように、敵兵は待ち構えていた。がしゃりと兵器を構える連中がずらりと並ぶ。『長い筒』を構えて、オステローデに一斉掃射で畳みかけようとする。
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