外伝『魔弾と聖剣〜竜具を介して心に問う』―中章
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(戦姫様達が力を合わせてくれれば、カヴァクなる『機械文明』にも十分立ち向かえるんだがな――)
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力なくため息をつきながら、ヴィッサリオンの心中にはある確信を得た。上出来だと――
ヴィッサリオンは口に出さず、心の中でそう戦姫二人を称賛した。科学たる物理法則に、力学の具現化とも取れる竜具の主では、知識体系を受け入れることはできないかもしれない。そのような不安要素は、若干ながらヴィッサリオンの意識の片隅に残っていたからだ。
しかし、戦姫は『カヴァク』なる概念を、『ヴェーダ』たる知識にて、強敵に立ち向かおうとしている。多少の皮肉や嫌味こそ浴びせあっているものの、こうして未曾有な危機の前には、しっかりと力を合わせて立ち向かうことができる――ヴィッサリオンはそう信じている。
ならば、自分は『非才なる身の―全力を以て』この力をふるうまでだ。
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――目の前にうつる全ての命を救う為に――
――願わくは、この刀身に映り返る人たちが、救われることを――
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「――ともかく、向こうのせいでこちらの出鼻がくじかれた。くじき返すにはちょうどいい反撃になる」
「戦姫様。ならば私は奴ら黒船の出鼻をくじくために早速切り込んで参りましょう※2――いで!」
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ふいに、ゴツンと殴られた衝撃を後頭部に感じた。振り返れば、オステローデの主様が手のひらをグーでナックルを入れたのだった。
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「貴様は我が国の……いや、この戦での『勝利のカギ』なんだぞ!突撃で討ち死では話にならん!」
「やはり似たもの同士ですのね。やはり心中する場を提供して差し上げますわ」
「先に私の逃げ場を提供してくださるとありがたいのですが……いだだだだだ!髪を引っ張らないで!」
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もともとこの不遜な傭兵を連れ戻すことが目的だ。そのためにわざわざ竜技さえも使って、ここまで足を運んできてやったのだ。このくらいの罰は与えてやりたいし、これで済めば安いものだと思ってもらいたい。時間も体力も空費するなど毛頭ない。
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「――虚空回廊」
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鎌の舞姫がそうつぶやくと、手元にある大鎌を一閃させて黒紫の回廊が開かれている。虚空へ続く扉の余波を浴びて、彼女の美しい髪がかすかに逆立っていく。
竜の逆髪―オステローデの姫君。
それは、戦姫の怒りに触れたものが表現する、文字通り『竜の逆髪』そのものだった。文字通り逆さまに髪の毛を引っ張られながら、ヴィッサリオンは虚空回廊の闇へ連行されていった――
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◇◇◇◇◇
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二人が虚無の向こう側へ飲み込まれていくのを確認した後、雷禍の閃姫は部下に再指令を再度通達。鞭のしなる音とともに発せられた。
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「軍議で打ち合わせた通りです!予定通り各自配置に付きなさい!」
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