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ソードアート・オンライン‐黒の幻影‐
第2章 魔女のオペレッタ  2024/08 
エピローグT:戦後密談
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でも否定し得ないものだと理解しているつもりだ。
 それを踏まえれば、俺はPoHを乱戦地帯に踏み込ませなかったという意味で作戦遂行に翳りを差す危険性を封じていたということになる。それ以上の結果を望まない現状のヒースクリフの態度からして、俺の立場を危ぶませるような真似も、肩入れするような事もしないだろう。しかし、それならばこうして接触を図る理由もただの結果報告だけであるとは思えなくなる。
 作戦時、PoHが現れなかったという事実を把握するだけならば他の団員から陳述を取ればいい。死亡を確認するならば生命の碑を目視すればいい。俺を呼び出して接触すること自体が、この秘密裏に為された依頼における情報が流出するリスクを高める要因となることは明らかなものだろうに。

 融けて滑ったグラスの氷が涼やかな音を立てる。思い浮かんだ疑念を口に出そうとするより先に、ヒースクリフの視線があって言葉を発するタイミングが遅れる。その間隙を突くように会話を切り出される。


「それにそろそろ気に掛かってきた頃だろう。君が召集された理由について」


 頃合いを見計らったかのように、俺の疑問は言い当てられた。
 同時に、一つ判然とした。眼前に佇む合理性の塊のような男が何の意図もなく無用なリスクを負う筈がない。或いは、既に彼の中ではこの依頼は完結した事象なのかも知れない。だからこそ、俺を呼び出す口実としての効力のみを見出して利用したのだろうか。別段、身に危険が迫るようなものではないだろうが。
 そんな考察も意に介さず、ヒースクリフはメインメニューを操作する。幾つかのタップを経て俺の前にウインドウが表示され、そこにはギルド加入について問うシステムアナウンスと、可否の意思表示を申告する《YES》と《NO》のボタン。予想だにしないヒースクリフの真意に思わず言葉を飲むと、テーブルの向こう側から再び声が向けられる。


「君の働きへの報酬、というには不躾だったか。だが、偽らざる評価だと認識して貰いたい」
「捨て駒が惜しくなったのか? それに、俺を加入させれば他のギルドは良い顔をしないだろう」


 それに、俺をギルドに抱え込むには不都合も多い筈だ。
 聖竜連合とは仲も悪いし、攻略組全体からの印章も芳しくない。おまけに俺は隠しコンテンツの情報を探る仕入業者のような立ち位置もあってお情けで攻略組の末席に収まることを許された爪弾き者である。俺自身の印象や情報開示の公平性という観点を指摘されれば、俺を引き入れたギルドに向けられる批難は多大なものになるだろう。


「捨て駒と評した覚えはないよ。だが、優秀な人材を見逃すわけにもいかないというのも本心でね。とはいえ、これは君にもメリットのある提案だと思っている。Mobの行動に確認されるイレギュラー性が増している現状を鑑みれ
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