第一章 天下統一編
第十八話 到来
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勘に障ったようだ。俺の物言いは織田信雄に対する皮肉に聞こえたのかもしれない。
「落とせるものなら落としてみろ!」
織田信雄は興奮しやけっぱちになり俺に怒鳴った。
「小田原でお前が土下座して関白殿下に許しを請う姿を楽しみにしているぞ。蒲生、細川さっさと小田原に向かう準備をはじめるぞ!」
織田信雄は石田三成に挨拶すること無く、肩をいからせ足を踏みならし本陣を去っていた。彼の後を蒲生氏郷と細川忠興がついていく。
蒲生氏郷は本陣の入り口付近で足を止めた。細川忠興は蒲生氏郷に遠慮して足を止める。すると蒲生氏郷は振り返り俺の方を見た。
「こそこそと動き回っていると思っていたが上手くやりおったな。相模守、お前は底意地の悪い小僧だ。次は一枚噛ませるんだぞ」
蒲生氏郷は意味深な笑みを浮かべ口角を上げた。彼はそれだけ言うと足を止めることなく去っていた。細川忠興は蒲生氏郷の言葉の意味が理解できない様子だったが、蒲生氏郷の後を追うように去っていた。
「相模守、仔細は全て話してもらうぞ」
福島正則は俺に声をかけてきた。彼の隣には蜂須賀家政もいた。二人とも俺が考え無しに韮山城を攻めようとしているんじゃないことは理解したんだろう。その上で俺がどう韮山城を攻めるつもりか確認するつもりなんだろう。この分だと二人は全てを話さないと引き下がらないだろう。
俺の作戦の全てを話したくないが、二人とも俺が韮山城を落とせると確信できないと、秀吉に詫びを入れさせるために俺を引きずってでも小田原に連行しそうだ。
それは不味い。
江川砦を落とした後は福島正則と蜂須賀家政に協力してもらった方が城攻めを進めやすいに違いない。ここは二人に譲歩するしかない。
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