第一章 天下統一編
第十八話 到来
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関白殿下に詫びてやる。蜂須賀も一緒に詫びてくれると言っている」
頭の上から福島正則の声が聞こえた。
「嫌です」
俺は唇を圧迫する床に抗い必死に口を開いた。俺はくぐもった声で福島正則に拒否の言葉を伝えた。その直後、俺の頭を抑える力が更に強まった。
「い痛でいでで」
あまりの痛みに俺は苦痛の言葉が口から出てしまった。頭だけでなく右肩の辺りから強い痛みを感じる。
「お前は分かっていない! 城を落とせなければ、お前は腹を切らなければならないのだぞ! 死ぬんだぞ! 分かっているのか!」
「必ず城を落とせしてみせます」
俺が痛みを堪え福島正則に抗弁する。すると頭と右肩の痛みが取れ、また俺の身体が宙に浮く感じがした。俺は首元を掴まれた状態で険しい表情の福島正則の顔と対面することになった。彼は怒っている様子はない。俺を心底心配しているように見えた。俺と福島正則の間には齟齬があるような気がする。だが、福島正則の反応は暴力的であることをおいといて、いたって正しいと思う。真逆、俺が入念に城攻めの準備を整えているとは思いもよらないはずだ。
「お前が勇気と知恵があることは認める。だが、お前は分かっていない。戦場はお前の思うように思う通りにはならない。四万の大軍で韮山城を攻めても落ちなかったんだぞ。それを初陣のお前が落とせる訳がないだろう。今回は諦めろ。逃げることは恥ずかしいことじゃない。生きていればきっと手柄を上げる機会はやってくる」
福島正則は俺を頭ごなしに叱りつけることは止め、俺を諭すように説得してきた。俺は福島正則の気持ちがよく理解できた。ここまで心配してくれていることに感謝の気持ちで一杯だ。豊臣秀次とは大違いだ。だが、俺は何も考え無しで秀吉と取引した訳じゃない。韮山城を落とす算段は既に整っている。後は実行に移すだけだ。
「三日の内に大手門を落とし江川砦を落としてみせましょう。出来なければ福島様のご忠告に従います」
俺は福島正則の厳つい顔を真正面から見据えて言った。
「三日だと!?」
俺の言葉に福島正則は目を見開いた。だが、俺の真剣な表情からいい知れない自信を感じ取ったのか、福島正則の目の雰囲気が変わり首元を掴む手を緩めた。俺は床に向かって激しく尻餅をついた。
尻を激しく打ち付けたせいで尻が痛い。俺は痛みのあまり尻をさすった。
「三日だと!」
もう少し優しく降ろしてくれ。俺が心の中でぼやいていると、先程まで大人しくしていた織田信雄が声を荒げ立ち上がった。
「小僧ほざきおったな。私が四万を率いても落とせなかった大手門をお前はたった三日で落とすだと」
織田信雄は振り返りこめかみをひくつかせながら俺を睨みつけていた。
俺が三日で韮山城を落とすと言ったことが
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