第一章 天下統一編
第十八話 到来
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け猶与をお与えください。必ず韮山城を落として見せます」
石田三成の淡々とした事務的な態度を気にする余裕は織田信雄には無いようだ。織田信雄は必死に石田三成に頼み込んでいた。だが、石田三成は織田信雄の頼みを意に介す様子は一切ない。石田三成にすれば秀吉の言葉を伝えに来ただけだから、織田信雄が幾ら弁明しようと話を聞くつもりはないのだろう。
「関白殿下は内大臣にお怒りです。兵を悪戯に消耗し一月経過しても韮山城を落とことができていない。これでは豊臣軍の威光が地に落ちるとお嘆きになられていました」
「だから、もう少し待って欲しいと言っている。必ず韮山城を落としてみせる」
織田信雄は尚もしつこく石田三成に総大将の解任を保留にして欲しいと食い下がっていた。だが、石田三成は能面のような表情で織田信雄を見下ろしていた。
「では何日あれば韮山城を落とせるのです?」
「一ヶ月。いや十五日あればきっと落とせる」
織田信雄は慌てながら韮山城を落とす期限を思案し石田三成に告げた。彼の口振りかして口から出任せに違いない。確実に落とせるというならころころと期限が変わる訳がない。石田三成も、織田信雄が虚言を言っていることを理解し、能面のような表情を崩さず織田信雄のことを見下ろしていた。
「約束を守れなければ腹を切ることができますか?」
石田三成は織田信雄の虚言を聞き終わると間を置かずに恐ろしい条件を織田信雄に告げた。織田信雄は呆けた表情で石田三成の顔を見ていた。彼は石田三成が言った内容を理解できないようだった。彼は内大臣である自分に失敗したら切腹しろと言うなんて思いもしなかったのだろう。俺も流石に石田三成が織田信雄にこんなことを告げるとは思わなかった。多分、秀吉が石田三成に指示したんだろう。石田三成の性格なら織田信雄の頼むを無視して帰りそうだからな。
「十五日で韮山城を落とせなければ、失敗の責任を取って切腹できるかと聞いているのです。内大臣が覚悟を決めておいでならば、関白殿下もお許しになることでしょう。それとも先程言われた言葉は、その場限りの嘘ですか?」
石田三成は淡々と織田信雄に確認した。織田信雄はようやく石田三成の言っていることを頭で理解したのか顔を紅潮させた。
「治部少輔、先程まで大人しく聞いておればつけあがりおって! 何故私が腹を切らねばならない」
織田信雄は興奮気味に石田三成を非難した。総大将を解任されたにも関わらず、しつこく地位にしがみつこうとするお前が悪い。俺以外の武将達も織田信雄のことを痛い人を見るような目で見ていた。
「私は関白殿下の上使です。内大臣、私への無礼は関白殿下への無礼。今日の件は関白殿下にご報告させていただきます」
織田信雄ははっとした顔に変わり石田三成に対し
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