第57話『雨中の集い』
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なんて・・・私知らなかった」
「俺もだ。平凡な晴登がな・・・」
「それ結構ダイレクトにディスってるよな」
鋭い晴登のツッコミに満足するかのように二人は笑う。結月もクスクスと微笑んでいた。
「無駄話はこの課題が終わってからだ。にしても、大地は課題はどうすんだ?」
テストはただの筆記試験ではない。事前に用意される課題を仕上げる事から、既にテストは始まっている。
「いや、俺はもう終わってるから良いんだけどさ」
「嫌味か、嫌味なのか? 勉強道具を忘れたんじゃなくて、元より無かったってか?!」
「ぶっちゃけそうだわ」
「否定しろよぉ!」
大地の天才ぶりにたまらず頭を抱える。
これでは、ただ暇人が遊びに来ただけではないか。
「大地、覚悟しとけよ。バンバン訊くからな」
「他力本願なとこは変わらないのな」
大地の指摘に堪えつつ、ようやくテスト勉強会が始まった。
* * * * * * * * * *
「ハルト、算数って難しいね。なんかゴチャゴチャする」
「俺もそう思う」
「いやいや、慣れれば楽しいぞ?」
「そう思えるほど余裕じゃないんだよ…」
結月と晴登の嘆きを、大地は無慈悲に否定する。
同情して欲しかったのだが、彼にその期待を抱くのは誤りだったようだ。
ちなみに、結月に渡してあるのは課題ではなく、算数のテキストである。まずは数学を攻略しようと考えたのだ。
「たぶん、次のテストに五教科は間に合わないだろうから」
「ハルト、何言ってるの?」
「こっちの話だ」
見たところ、結月は算数が苦手という訳ではない。意欲的に取り組んではいるし、恐らく苦労するのは最初だけだろう。
ただ、その最初が長い。何せ、小学生の内容を総ざらいするのだから。
「特に、かけ算って難しい…」
「日常は、足し算と引き算で事足りるからなぁ…」
「ハルト、この"九九"ってやつ教えて」
「いや、それ覚えるものだし・・・ってあぁ、理屈を教えなきゃか」
晴登にとっては九九は常識。しかし、結月にとってはいわば未知の領域なのだ。一から教える必要がある。
「"倍"ってわかるか?」
「あーボンヤリとしか…」
「やっぱ日常で使わないからか。とりあえず、倍っていうのは、かけ算と同じ意味だ」
「うん」
首を傾げながら、結月は何となくという様子で話を聞いている。
晴登はこの後も説明を続けるが、結月は要領を得ないらしく、表情が晴れなかった。
「さすがに教師みたいには説明できないな…」
「わかった晴登、俺が代わる」
「お、大地
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