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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第三十六話 真実
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やかな笑みを浮かべている。
「少佐、贄とは生贄の事か?」
オフレッサーが低い声で確かめた。
「そうです。平民達の帝国への不満が高まったとき、カストロプ公を処罰して不満を収める。そのために用意された贄です……」
何を言った? 今キスリングは何を言った? 分からない、だがどうしようもないほど悪寒が走った。リューネブルクも顔を引き攣らせている。オフレッサーは、オフレッサーも顔を引き攣らせている。俺は一体何を聞いた?
「カストロプ公は自分が何をやっても許されると思っているでしょう。その通りです、彼にはすべてが許される。彼が悪事を重ねれれば重ねるほど平民達は彼を憎む。そして彼が処罰された時、喝采を送るでしょう……。カストロプ公は一歩一歩破滅へと向かっている。本人だけが分かっていない。牛や豚と同じですよ、太らせてから食う、しかし彼らにはそれが分からない……」
キスリングが笑い出した。可笑しくて堪らないと言うように笑っている。
「笑うのを止めろ、少佐、笑いごとではあるまい」
リューネブルクが顔を蒼褪めさせて叱責した。しかしキスリングは笑うのを止めない。
「ルーゲ伯も私達の前で笑っていました、気が狂ったように……。そして泣いていました。ヴァンフリートで三百万人近い死者が出たのは自分の所為だと。あの時カストロプ公を断罪しておけばこんなことにはならなかったと、そして自分を許してくれと……」
「……」
キスリングが笑いを収めた。そして沈鬱な表情で語りだす。
「屋敷を辞去するとき使用人に聞きました。ヴァンフリート会戦以降、伯は毎日酒を浴びるように飲み、泣き喚き、狂ったように笑っていたそうです。このイゼルローンに来てからですが伯が自殺したとオーディンのアントンから連絡が有りました。また一人、贄のために犠牲が出た……」
病室に沈黙が落ちた。聞きたくなかった、あの敗戦にそんな秘密が有ったなど知りたくなかった。三百万の将兵が死んだ原因が贄だと言うのか? キルヒアイスは、キルヒアイスはそんなことのために死んだのか?
帝国が楽園だなどとは思っていない、しかしここまで腐っているとは思わなかった。俺はいったい何を見てきたのだ?
“……最初に断っておきます。この秘密を知れば必ず後悔します。何故知ったのかと……”
キスリングの言葉が今更ながら思い出された。その通りだ、知りたくなかった、しかし知ってしまった。これからどうすれば良い……。
「我々は全てをブラウンシュバイク公に話しました。そしてカストロプ公の断罪とエーリッヒの帰還を求めたのです」
「どうなった」
低い声でオフレッサーが問いかけた。
「ブラウンシュバイク公とリヒテンラーデ侯の間で話し合いが持たれました。そしてカストロプ公の断罪が決まりました。おそらく我々がオーディ
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