第一章 天下統一編
第十七話 雌伏
[6/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
に「そうか」と返事した。
「夏、お前が私の側室になる日取りは改めて決める。それで問題ないか?」
「問題ございません」
こうして俺は夏を側室することになった。しかし、火付け専門の風魔衆の忍びを韮山城攻めに投入できる。韮山城には煙硝蔵がある。幾ら大量の鉄砲があろうと火薬が無くなれば只のがらくただ。俺は口元に笑みを浮かべた。
俺は風魔小太郎の娘、夏、との面会を終えると食事を早々と済ませ後方支援の仕事についた。後方支援に回って四日が経過したが、毎日俺の一日は平和だ。今日も大きく変わることはないだろう。韮山城に籠もる北条兵は積極的に城外に兵を繰り出していることはないからだ。数に勝る敵相手に城外戦を行うことは無謀なことだ。北条氏規は俺が伝えた情報で韮山城が完全に孤立した状態に陥いると考え、自軍の消耗を極力避けるように動くはずだ。その証拠に豊臣軍が攻めない限り動かないらしい。
「殿、内大臣様の殿への扱いはあまりに無体です」
俺の隣で曽根昌世が嘆くように喋りだした。
俺は馬上から遠く先まで続く荷駄隊の列を眺めていた。俺の近くには柳生宗章と柳生宗矩も控えている。曽根昌世ももう少しこの長閑な雰囲気を堪能した方がいい。一ヶ月後には嫌でも戦場に身を置き神経磨り減らすことになる。
「内匠助、そう悪いことばかりじゃない」
俺は意味深な笑みを浮かべ嘆く曽根昌世を見た。曽根昌世は俺の態度に溜め息をついた。彼は俺の企みの全て知らされているから、俺が兵力を無傷で温存できる現状を喜んでいることも理解している。しかし、彼の表情は俺の気持ちとは異なるようだ。
「殿はもう少し家臣達のこともお考えください。今度の配置で家臣達の士気が下がっております。先陣に出て戦っていた者達の中には殿に仕官したことを嘆いている者達もおります」
俺の脳裏に思い浮かんだ者達は十河家の旧臣達だった。彼らは十河存英、十河保長を名目上の頭にして二部隊を編成して行動している。この二部隊は俺が指揮する夜襲とは名ばかりの演習に加わらず、織田信雄の指揮する豊臣軍の先陣に加わっていた。だが初日は俺が日和見していたため、彼らがが先陣に加わったのは昨日一日だけだなる。折角得た手柄を立てる機会を奪われたことで落ち込んでいるんだろう。
嘆くなら俺の指揮する夜襲に加わればいい。だが、嘆くだけでふて寝とはどうしようもない奴らだな。
二十六日後には織田信雄は解任され、俺は城攻めに取りかかれる。そうなれば彼らに手柄をあげる機会を与えることができる。俺は彼らにそのことは伝えていないため、俺の余裕綽々な態度に心乱されるんだろう。だが、べらべらと誰彼構わず話せる訳もない。
「嘆いているのは十河家の旧臣達か?」
曽根昌世は何も答え無い。それを俺は肯定の返事と
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ