第一章 天下統一編
第十七話 雌伏
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「いいえ。役目上必要になるため作成していただけです。これを小出相模守様に献上することで、風魔衆は忠誠の証としたいと考えております。どうぞお受け取りください」
夏は平伏して俺に風魔衆の総意を伝えてきた。風魔衆が北条家が韮山城の図面を豊臣方に渡したことが分かれば、風魔衆は族滅必死だ。風魔衆の意思は固まったと見て大丈夫だろう。
「風魔衆の覚悟はよく分かった」
「ありがとうございます」
夏は平伏したまま礼を言うと頭を上げる。
「この図面を俺に献上したということは玄馬から私が韮山城を調べさている情報を伝え聞いたか?」
俺は射貫くような鋭い目で夏を見据えた。
「申し訳ございません」
「構わない。だが、今後はこんな真似はしないことだ。私から余計な疑いを買いたくはないだろう。私は風魔衆とは末永く良好な関係を築きたいと考えている」
俺は夏に婉曲に脅しをかけた。夏は表情を固め俺に平伏した。この位でいいだろう。あまり脅し過ぎても両者の関係に溝を作ってしまう。
「ところで。夏、風魔衆には火の扱いに慣れた者はいるか?」
「火の扱いでございますか? 残念ですが鉄砲の扱いに慣れた者は風魔衆にはいません」
俺は頭を左右に振った。
「勘違いしているようだな。俺が欲しいのは火付けに慣れた者だ。風魔衆は抱えているだろ?」
「はい、抱えております」
「風魔衆が人を出すなら、風魔小太郎を家老待遇ではなく、正真正銘の家老にしよう。そして、お前を側室として迎える。どうだ?」
夏は俺の申し出に固まった。俺の話は突拍子もないから驚いているのだろう。だが、悪い話じゃないはずだ。側室とはいえ、主君と縁続きになれば新参の風魔衆も立場が盤石になる。問題は俺が若年過ぎることだろうか。
俺に韮山城の見取り図を差し出す辺り、風魔小太郎は俺の申し出を喜んで受けるだろう。夏に関しては彼女が婚姻に対してどういう価値観を持っているか分からない。だが、家のためなら受けるに違いない。俺もそう言うものだと割り切るつもりでいる。この時代は婚姻による家同士の絆を強化する手段は有効だからな。御家騒動の原因にもなるが主君がしっかりと舵取りをすれば問題ないと考えている。
「小出相模守様、その申し出は真でしょうか?」
夏は前のめりになりながら真剣な顔で俺に質問してきた。彼女は凄く乗り気な様子だ。俺から持ちかけた話だが、俺は彼女の反応に戸惑ってしまった。
「二言はない」
「その話を謹んでお受けいたします」
「風魔小太郎には確認しなくても大丈夫か?」
俺は念のためここで即決してしまって大丈夫か確認した。
「問題ございません。小出相模守様の申し出は風魔衆としても光栄なことでございます」
俺は狼狽え気味
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