第一章 天下統一編
第十七話 雌伏
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を送られれてはいかがでしょうか。北条氏規は同じ返事しかしないでしょう」
俺は織田信雄を見据えて意見した。俺の動じない態度に織田信雄は舌打ちする。
「黙れ。北条氏規を降伏させることができなかった癖に、私に偉そうに意見をしおって!」
織田信雄は声を荒げた。俺が意見することが気に入らないのだろう。
「相模守、お前のような小僧は私の命令に従っておればいいのだ。分かったか?」
織田信雄は自分のことを棚に上げ、俺が北条氏規を降伏させることができなかったことを理由に俺を黙らせた。彼の鬼の首を取ったような態度に俺の気持ちは不愉快になる。
こんな馬鹿の命令に大人しく従うのは癪だが、ここはおとしなく黙るしかない。精々、この馬鹿には秀吉が更迭するまで道化を演じてもらおう。どうせ城は落とせやしない。
「分かったかと聞いているのだ!」
織田信雄は沈黙する俺を眉間に皺を寄せ睨みつけると声を荒げた。
「生意気を申しまして申し訳ございませんでした。内大臣様のお指図に黙って従わせていただきます」
俺は頭を下げ殊勝な態度で織田信雄に言った。俺が顔を上げると織田信雄は鼻を鳴らし、俺を手の仕草で「失せろ」と伝えてきた。俺はもう一度頭を下げると織田信雄の元から去った。
織田信雄への報告から半刻(一時間)が経過した頃、俺の元に織田信雄からの使者が伝言を伝えてきた。
伝言の内容は俺に後方支援を担当しろとのことだ。俺が最前線から遠ざけられたことを意味する。とはいえ韮山城下に駐屯することは許されている。
織田信雄の本音が見え見えだ。
織田信雄は俺に手柄を与えるつもりがない。彼の本音は俺をもっと遠くに飛ばしたいと思っているだろうが、それは秀吉が俺に与えた命令もあり無理と考えたんだろう。しかし、織田信雄のせこい嫌がらせに彼の器の小ささを感じた。だが、織田信雄の嫌がらせのお陰で俺の兵達が損耗することを避けることができる。これは怪我の功名だな。
俺は後方支援の役目について四日目の朝を迎えた。俺は体を起こし寝ぼけた意識の中で前方の木製の壁を眺めていた。木製の壁は板を幾つも貼り合わせたものであるため継ぎ目に隙間があり、そこから陽光が差し込んでいた。
今日も良い天気のようだな。
一昨日の夜も大手門に鉄砲を打ち込んだ。
今夜も大手門に鉄砲を撃ち込む。
同じ間隔で同じ刻限で同じ時間だけ鉄砲を撃ち込むことに意味がある。俺の戦術は正攻法じゃない。相手が油断してくれないと困る。
「殿、夏様が戻ってきました」
俺の部屋の扉から聞き慣れた女の声が聞こえた。先頃、俺の家臣になった元風魔衆の雪だ。俺はゆっくりと扉に視線を向けた。
「夏? 風魔小太郎の娘だったな」
俺
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