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俺たちで文豪ストレイドッグスやってみた。
第6話『月下舞踏』
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「そうです、よね……ありがとうございます」
「どういたしましてなのですー」

 かずのこが笑顔を浮かべる。あぁ、この人たちの仲間になれて、良かった──このとき初めて、絵里はそう思えたのだった。


「とはいえ」

 暫く後。
 健が一転して真剣な表情になる。腕を組んで壁に背を預けた彼は、普段の軽薄な印象とは百八十度真逆──有能な指揮官(ブレイン)の姿をしていた。

「ただこの場所の安全性に胡座をかいてちゃダメだ。あいつらは執念深い。いつか絶対追い込まれる」
「そうですね……」

 達也もその意見に頷いた。
 異能マフィアは得てして執念深い。彼らはこれまで、欲しいものはその力でもって全て手にいれてきた……そんな人間たちの集まりだ。己の手で手に入れられぬモノなどない。その絶対的な自負が、彼らに無限の執着を与える。

「健さんはどうするつもりだ」

 兵児が冷静な色で健に問う。指示を出せ。俺はそれに応えるだけだ──と。
 駒として。最強の、(ポーン)として。冷徹なデュエリストは、静かに指示を待つ。

「僕は強行突破を提案したい」
「強行突破……!? 本部に突撃するってことですか!?」
「そうだよ」
「無茶だ!」

 達也が叫ぶ。
 健は首をかしげると、肩を竦める。
 
「何で? あいつらが攻めてくるなら、こっちも攻め返さなきゃ。ガンガン行こうぜ。ガン◯ンコミックス的に」
「そうは行きません。今本部を強襲するのは危険すぎる。まだ俺達の前に姿を表していないメンバーが居るはずだし、何より彼女が──……いや、まさか。健さん、あんた」

 戦く。達也の双眸は大きく見開かれ、口元までもが戦慄いた。彼の右手が数度、迷うように閉じたり開いたりを繰り返し、そして、強く握り締められた。

「過去を、取り戻しに行くつもりなんだな」
「うん。彼女と──カミサキ、いいや。『ユミナ』と話をしに行く」

 達也の視線が落とされる。その眼に映るのは迷いだ。副長として健の意見に賛成したい。けれども彼自身は、その考えを否定したい──板挟みの内にあるからこその、惑い。

 しかし健はメンバーたちを見渡すと、

「皆は、どうかな?」

 問うた。

「良いんじゃないですか。俺は指示に従うだけです。アイツらに一泡ふかせてやりましょう」
「ボクも賛成なのです〜!」

 兵児は珍しく微笑んで。かずのこはいつも通りに天真爛漫に。

「私は……」

 しかし絵里は迷ったままだ。賛成の意思を示していいのか分からない。それは達也の、全てを知るが故の迷いとは逆だ。何も知らない存在だからこそ、今ここで、賛否を提示してはいけない様な気がしたのだ。
 ──折角さっきは、仲間になれて良かった、と思ったのに。
 ──こ
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