124章 中島みゆきの『恋文』をカヴァーする信也
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124章 中島みゆきの『恋文』をカヴァーする信也
5月4日のみどりの日の午後1時ころ。気温は22度ほど。やさしい南風が吹いている。
マンガ家の青木心菜は、明大前駅、京王線ホームの、
ガラス張りの明るい待合室で、親友の水沢由紀を待っている。
心菜がちょっと待っていると、ピンクベージュのワンピースで、由紀はやって来る。
着心地の良さそうな半袖のカットソーと、
ギャザースカートが一緒になったようなデザインのワンピースの由紀。
「由紀ちゃん、かわいいワンピースね。ピンクベージュでしょ?すてきだわ。
でも、わたしのピンクと同じ色じゃなくって、良かったわ!うふふ」
心菜はそう言って笑った。
「心菜ちゃんのワンピースも春らしくってすてき!ここのスリットが、繊細でセクシーなスカートね!」
由紀が天真爛漫な笑顔でそう言った。
「あら、そうかしら。ありがと!由紀ちゃん」
落ちついたコーラルピンクの、ふんわり柔らかいシルエットのワンピースの心菜。
ふたりは渋谷駅から歩いて3分ほどの、ライブハウスのイエスタデイ(Yesterday)行くところだ。
「きょうの、しんちゃんたちのライヴは楽しそうよね」と由紀が言う。
「うん。今日のライヴのオープニング曲は、
中島みゆきさんの『恋文』のカヴァーですって。由紀ちゃんと一緒に、ぜひ聴きに来てね!って、
しんちゃんがメールしてくれた!楽しみよね!」
心菜と由紀は目を見合わせて笑ったりしながら、京王線ホームからエレベーターに乗り、
地下1階の井の頭線ホームで、渋谷駅方面の列車を待つ。
ふたりは各駅停車の渋谷行きに乗車すると、ドア近くのシートに座った。
渋谷までの所要時間は、12分くらいだ。
「しんちゃんからこの本をいただいたの。
この本、いまはもう絶版で、アマゾンなら中古本が売っているんですって」
1990年に出版された朝日文庫の『中島みゆき全歌集』を、
ライトブルーのショルダーストラップ付きのハンドバックから、心菜は取り出す。
「しんちゃんって、熱烈な、中島みゆきのファンだというのは、意外よね!心菜ちゃん」
「ちょっと、ユーモラスなトピックスよね。うっふふ。
硬派なロッカーのイメージが強い、しんちゃんは、
高校生の時は、アメリカのパンク・ロックバンドの、ラモーンズのコピーをしていたし、
日本のバンドでは、ブランキージェットシティや、
ミッシェル・ガン・エレファントをコピーしていたもんね。
まさか、中島みゆきさんに、ラブレターを出すほど心酔しているというのは、ちょっと意外だった。
でも、しんちゃんって、そん
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