第2章 魔女のオペレッタ 2024/08
最後の物語:幸せは夢の彼方に
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うから。
だからこそ眠り続ける幼い少女の前から、ピニオラは夢のように消え去ることが出来る。引き留められることのない以上、自分のような怪物と徒に長く接する理由もないのだからと、何度も何度も自らに言い聞かせる。
これで楽しかった夢は終わり。朝日が昇った頃には、親友はたくさんの友達に囲まれて生きていける。年相応に思いっきり遊んで、いっぱい笑って、いっぱい泣いて、そんな幸福な時間を過ごせるはず。
でも、最後に一度だけ。魔女はおまじないの代わりに、幼い寝顔にキスをする。
これから先、せめてこれ以上の苦難に遭わぬよう、願わくば、幸せに健やかに、生きて元の世界へ帰れるように。お金の少しも持たせてあげたいけれど、親友の強さを知っているからこそ、それ以上はしないように努める。
「では、さようなら。わたしの大切なお友達。………今度は、こんないけない魔女に引っかかっちゃダメですからねぇ?」
やがて教会のドアにノックの音が鳴る。
慌ててその場に駆け付けた、眼鏡をかけたショートヘアの女性の目に映ったのは、端の擦り切れた黒のローブの上に寝かされた小さな女の子。
眠ったままの少女は、自分を抱きかかえる誰かの胸の中で、誰にも見られないように溜めていた涙を流した。親友を送り出す為には隠し通さなければならなかった、悲痛な思いと一緒に。
――――少女と魔女の平凡で平穏な御伽話の、夢のように儚い終わりだった。
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