第3話<珍道中の始まり>
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毛が口に入った。私は手のひらで風になびく金髪を払いながら荷台を覗く。確かにシートに包まれた無骨な物体があった。
髪の毛を逆立てながら夕立が喜々として言う。
「相変わらずスゴイっぽい! 夕張が作ったんでしょ? これ」
だが私は気になった。
「いや、これって確か試作品だろ? ……実際に敵に撃ったことあるのか?」
「……」
誰も反応がない。
「何だ、やっぱり撃ってないな」
まぁ形だけでも準備万端整ってはいる。そりゃ機銃があれば心強いが、一番良いのはそれを使わないことだ。
取り敢えず、この珍道中の間は平穏無事に済んでくれることを祈るばかりだ。
やがて軍用車は幹線道路から少し小さい県道に入った。公園の脇を走りながら私は日向の言葉を思い出した。
(重戦車でも……って?)
まさか、その機関銃を街中でぶっ放すんじゃないだろうな? 曲がりなりにも私の地元だ。それだけは避けたい。
艦娘って日向みたいな落ち着いた娘でも、どこかしら「戦闘バカ」みたいな雰囲気がある。敵が本当に来たらマジでぶっ放しそうだ。ちょっと恐い。
しかし今日は索敵に強い寛代もいるし。仮に敵が空から襲ってきても今度は直ぐに分かるだろう。
そこまで考えた私は傍と気づいた。
「待てよ」
「ぽい?」
夕立が、のん気に反応する。
「敵って、まさかホントに戦車、持ってないよな?」
私の言葉に日向が応える。
「……それは分かりません」
「でもぉ」
あっけらかんとした夕立。
「あっても、おかしくないよね」
そりゃ怖いって。
この狭い境港で地上戦? ……想像したくないぞ。
「ねぇねぇ、敵の地上部隊ってホントにあるのかな?」
「さぁ……噂では、あるようですが」
夕立の言葉に応える日向。
艦娘たちが会話をしている間に軍用車は、どんどん市街に入る。
ふと日向が聞いてくる。
「ところで司令の、お墓はどちらですか?」
私は傍と考え込んだ。
「ええっと、境港の役場の傍って言う記憶しかないんだ」
実はここ十数年、参ってない。そもそも境港にあるのは母方のお墓。なおさら記憶がボヤける。
「……そうですか」
淡々と答える日向。
すると急に夕立がカットインしてくる。
「ねぇねぇ、司令の実家に先に行って聞いちゃったほうが早くないっぽい?」
なるほど確かに。
「それは良いな、夕立」
妙案だな。思わず褒めてしまった。
「えへへ」
頭に手をやりながら意外にも照れ隠しをしている彼女。
それを受けて日向も聞いてきた。
「では、これから司令のご実家へ向かいましょうか?」
「うむ、そうだな」
そう応えた私だったが何年も戻っていない実家
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