SIDE:A
第十五話
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一週間が経った現在。
目隠しにも大分慣れ、サバイバル生活を悠々と送っています。
† † †
「グォー!」
「……思えば、お前とこうして戦り合うのも、これで五度目になるんだな」
俺は今、今日の晩飯になる魚が入った網を片手に強敵と対峙していた。いつも羽織っている黒地のコートを拠点に置いてあるためパンツ一丁姿であり、傍目から見たら到底締まらない光景に見えるだろう。
しかし、幾度となく拳と爪を交わしきた俺たちの中に浮ついた気持ちはなく、どちらも覇気と気力に満ちていた。
奴の名はゴン太。サバイバル初日から幾度も死闘を繰り広げてきた心のライバルである大熊だ。今は包帯で目隠しをしているため見えないが、その左目には深い十字傷が残っており、彼の壮絶な熊生を物語っている。
――奴の気配が荒々しいものに変わっていく。仕掛けてくる!
晩飯の魚ちゃんを脇に置き、身構える。正面からドスンドスンと勢いをつけて走ってきているのが分かる。そして眼前に迫ったゴン太は立ち上がると、その野太い右腕を振り上げた。
「グォォォー!」
「ふんっ!」
振り下ろされる熊手を深く踏み込み上体を屈めることで躱す。ボクシングでいうところのダッキングだ。
そして起き上がりながら腰を捻り、踏み込んだ左親指に全荷重を乗せたブロー!
「グォォー!」
「チッ、やっぱ効かないよな!」
ゴン太は「そんな貧弱な拳、効かんわー!」とでも言うように横薙ぎに腕を振るう。懐に入り込んでいるため爪は当たらないと判断した俺はその場で反転し、ゴン太の勢いを利用する形で背負い投げをする。俺の身長の二倍近くある巨体のゴン太でも勢いを利用すれば投げることは容易だ。
「グオ!?」
急に視界が回ったことに驚いたのだろう。地面に打ち付けられたゴン太が戸惑いの声を上げた。混乱している隙を狙いゴン太の首に足を回して頭部を固定すると、その眉間目掛けて肘を振り落とした。
「グォ……ォ……」
眉間は生物共通の弱点である。本気で肘内をしたら脳を破壊してしまうから、ちゃんと手加減をしました。こいつとの戦いはある意味じゃれ合いの延長線にあるしな。
気絶したゴン太から離れて体に付いた土を払い落とす。あー、これは後でまた小川に行かないとダメだな。
ゴン太が目を覚ますまで傍の木の幹に腰を下ろす。心のライバルであるゴン太を見捨てるなんて無情なこと、俺にはできない。
「グオー」
五分ほどで気絶から回復したゴン太は「お腹すいたー」とでも言うように
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