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ならぬ程ではあるが、確かに感情を顔に出した。グランから見れば、切っ先から肘までは点としてしか認識出来ず、間合いが図りづらいだろう。そしてその分かりにくさは意図せずとも視線がそこに移動してしまう。
グランがすり足で距離を詰める。時は、今。
剣と足元に魔術を込める。グランはそれに秒を五等分した一つに満たぬ程の時間で反応し、間合いを詰め野太刀を振り下ろす。私はそれに、剣をあわせない。魔術を込めた足を我武者羅に行使して後ろへ跳ねる。グランの刀は私の前腕の中程を半分ほど斜めに切り込みを入れた。これで左腕は使い物にならない。しかし、僥倖。
グランは剣に集中しすぎ、足元に込めた魔術を見逃しのだろう、だから私を殺しきれないのに野太刀を振るった。
私の左腕を犠牲に得たのは僅かな時間と間合い、そして魔力を込めた剣一本。
そもそも考える余地はない。此方が劣っている部分が多い以上、勝る部分で勝負を挑むは道理。それは何も体力だけではない。私が持つ武器もそうだ。それは何も刃の長さだけが武器となるものではない。
……これは、私の奥義。然らば、必殺。
「ルミノックス」
グランと間が開いているにもかかわらず、右手で剣を頭上に掲げる。その瞬間、私とグランとの間に、緑色の球体が生まれ光り輝いていく。
この剣は世界樹の晶剣である。この武器に宿っているのはかのユグドラシルの真の姿であるユグドラシル・マグナの力だ。そしてルミノックスはそのユグドラシルの奥義の名。 そもそも、星晶獣とは兵器である。そしてその奥義となれば、簡単に言えば、人を殺し兵器を壊し戦況を変えるためのものである。故に、その力を借りるこの剣の力は絶大である。周りに味方がいれば容易に巻き込んで殺そう。無論、敵なんてものはこの光によって――
「――次元断」
緑輝が割れる。
「嗚呼」
間の抜けた声が自身の口から漏れた。それは異様な光景だった。莫大な魔力で錬られた緑光は、それが硬いものでもないのに割れたのだ。
硝子に罅が入るような音が鳴り響くと同時、周りの空気が罅割れた。罅は緑光の元から私の直ぐ横を抜けてゆく。あと一尺ずれていれば、私の右半身はこの空気と共に割れただろう。
緑光が、硝子を割ったような音を立てて砕ける。一瞬遅れて理解が及ぶ。グランが使ったのは割れないはずのものも割り砕く強大な魔術だ。ルミノックスが目の前にあるおかげで余波しか私の元へ届かなかったが、もし直接私へ行使されたのならば私の魔術では到底防ぎきれなかっただろう。
砕け散った緑光の破片の中、グランは私へ向かって駆け出した。驚きで声が出ない。割れたと言えどもあれは破片一つ一つが莫大な魔力を湛えている。受ければ無傷というわけにはいかない。
グランの吶喊は、見ていて痛ましかった。彼が短時間で貼った魔術的な防壁も予めかけてあ
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