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二人の騎空士
進行度 6/7
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は武器の長さで勝負がつきやすい。剣で槍を相手にする際、勝つにはその技量に三倍の差がなければ難しいという。つまり、刃渡り、という点では私は彼に劣っている。
 では技量。これは一議に及ばず。彼のほうが遥かに優れる。理由は簡単、団員全員を相手にして、勝つなんて芸当は私は到底こなせないからだ。ただ単純なる剣技、槍技であればもしや彼を超えるやもしれぬ、そういう者は団員にもいるだろう。しかしながら、彼は如何な武器でも魔術でも扱う。それは私との戦闘の前にも、団員との戦いでそれを見せている。奪った武器、放った魔術はそれこそ数知れず。その全てを用い団員を倒したのだから技術という面で私の団に敵うものはいない。それは私を含めても。
 さて、最後に。体力である。これは何も継続戦闘能力という面だけではない。精神力や集中力、という点でもだ。如何な武器を用い如何な技術を持とうが、気が抜けていれば三下にも負けよう。
 その点、彼は劣っている。こればっかりは疑いようがない。莫大な魔力と超常的な技術を持とうが、名うての団員何十人もと乱闘したのだ。先の一対一での戦闘でもわかったが、序盤に比べて遥かに判断が遅れている。魔術の威力などもだ。攻めるとしたら、この場所。
 グランが野太刀を上段に構える。非常に攻撃的な構えだ。上段に構えたグランはそれを振り下ろすだけで速度の乗った攻撃が行える。こちらよりも間合いが長いのだ。近づけば袈裟斬りにされよう。対す私は下段。これは相手の上段に合わせた構えであり、振り下ろしに対し振り上げで対応する。そして下段の長所は獲物の長さを相手に目測されにくい事にある。此度の戦で今初めて鞘から剣を抜いたのだ。相手は私の間合いを測りかねるだろう。
 距離は五間。呼吸は浅く、直ぐ様動けるように体から無駄な力を抜く。下手に動けば後の先を取られるのは必須。然らば戦闘は膠着する。集中が切れたほうがその隙を突かれ、死ぬだろう。
 隙を見せぬよう、互いにすり足。じりじりと近づく間合いは気づけば三間。グランに隙はない。小さい頃から一年前まで兄弟の様に育った私でさえ、彼の呼吸の合間は伺えない。背中を汗が伝う。私の呼吸は見抜かれているのだろうか。いや、そもそも必殺の間合いは相手の方が長い。それを下段を合わせるだけで崩せるか。
 本当に極僅か。私以外の誰もが気づかないような程微かに、グランは笑った。――思考が泥沼に陥っていた事を自覚する。あのまま行けば、確実に集中を切らしグランに討たれていただろう。グランはそれさえも読み、そんなしょうもない結末は御免だとこちらに気づかせたのだ。
 合わせて、私も微かに笑う。思えば、嘗ての稽古で互いが膠着した時、それを破るのは常に私だった。
 下段の構えを緩やかに解き、正眼へ。肘から剣先までをグランの視線から見て直線に置くようにする。
 グランが隙に
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