The fate episode
二人目の騎空士
進行度 3/7
[4/4]
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
止めた。ついで、誰かに肩を捕まれ引き戻される。振り返れば、カタリナが沈痛な面持ちでグランを見ていた。
「援護する、ついて来て」
「二時方向を見ろ」
カタリナの言うとおりに視線を動かせば、そこには帝国軍兵士が十名以上連なっている。彼らは此方を逃すまいと躍起になって駆け寄ってきている。接敵まで幾許もない。
「出発しよ……」
出発しようと言いかけたカタリナは、不意に倒れ込んだ。見れば、腰辺りの鎧の隙間を矢が抜けている。――動けるのは、私だけ。私が決める。私が。
グランを回収し出発。グランとカタリナを治療しながら操舵し避難先を見つける。よし、計画に不備はない。大丈夫。私ならやれる。あの程度の兵士なんとかなる。
――そんな、そんな理想論で頭を満たした私の視界に、ルリアが写った。その瞬間に、全てを悟る。無理だ。グランのところへ行っても巻き添えを食らうだけ。私が如何な手法を使おうともグランは死ぬ。私が決められるのは、三人がどうなるかという部分だけ。
私は操舵室に入り発動機出力を上げ、舵を切る。艇は少しずつ、だが確実にザンクティンゼルの港を離れていく。
これで三人は生き延びられた。彼の犠牲の上に、私たちは生き残ったんだ。
私は操舵を行っているため、甲板に出て取り残されたグランを見ることは出来ない。
「は」
口元が歪に釣り上げられる。自分の口から漏れた声が何を意味しているのか、私は直ぐには理解できなかった。
「ははははは」
暫くして漸く、自分が笑っている事に気がついた。何が二人で騎空士になるんだよ、だ。この艇には私しかいないじゃないか。
「かは、ははは」
気が狂れたように笑い続ける私を、重傷を負い甲板に寝そべったカタリナがただ見つめていた。
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ