The fate episode
二人目の騎空士
進行度 3/7
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一度紐を引っ張る。またかからない。
「帝国軍の増援に見つかった」
ルリアが背後で放った言葉は、数瞬ばかり私の呼吸を止めた。すぐ様気を取り直し、紐を引っ張る。かからない。
紐を引っ張る。かからない。
後ろで扉が荒々しく開け放たれる。何事かと振り返れば、帝国軍兵士の背中が見えた。
「うおおおお!」
聞こえてくるはカタリナの怒号。帝国軍兵士はカタリナに押されながら後ろに数歩たたらを踏むと倒れ込んだ。カタリナは倒れた兵士の鎧の隙間、首元に細剣を差し込む。
「ごっ」
声ではなく、形容しにくい音を口から発した兵士の鎧の隙間から、どろりと血が流れ出る。
「ジータ!」
カタリナが言いたいことは分かる。だがかからないのだからどうしようもない。
「かかれ」
紐を引っ張る。
「かかれぇ!」
紐を引っ張る。しかし、すぐに発動機は止まってしまう。
「でえりゃ!」
駆け足で近づいてきたカタリナが、発動機を横合いから蹴り飛ばす。
「な、何を」
「機械はこうすれば動くと記憶している!」
なんて乱暴な。こんな事をしては動くものも動かない。私はこれ以上の口論を止め、紐を引っ張る。発動機は先程よりも長く気の抜けた音を出して止まった。もしや。
私は無言のままカタリナが蹴った場所の逆側を蹴り、紐を引っ張る。発動機はぶすぶすと気の抜けた音を数秒発した後、正常に動き出した。
「よし、段階的に出力を上げていく。全員体を固定して」
「待て、グランが帰ってきていない」
「何ですって」
「繋留具を外していたんだが、その時に――」
カタリナの言葉を聞き終わらない内に私は腰にまだ剣があることを確認して船内から飛び出す。グランは船の直ぐ側の物揚場で兵士三名の足止めを行っていた。いや、足止めですら無い。彼は手負いの兵士を人質に取り間合いを取っているだけに過ぎない。
私に気づいたグランは顔で船内に戻るように指示を出す。しかし私は頷かない。グランは圧倒的に不利だ。兵士三人はじりじりとグランを取り囲むように移動している。足止めも長くは続かないだろう。
私は彼に援護すると決め、一歩を踏み出す。その瞬間、一本の矢がグランの左腕を貫いた。
「グラン!」
グランは直ぐに捕らえていた兵士に止めを刺す。他の兵士が間合いを詰めるがその兵士に死体を押し付けまた間合いを離す。しかしまたもや彼を矢が穿つ。背中からで分からないが、刺さったのは恐らく右肺の辺り。
背中から斬りかかってくる兵士をグランは背中にも目があると言わんばかりに避け、足を引っ掛け転ばせつつ岸壁から突き落とした。数は残り二人。私は矢を放った兵士を探す。いた。付近の家の影。既に三本目を番えている。しかしまだグランの援護には間に合――
「行け!」
グランの言葉に、私は踏み出しかけた一歩を
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