The fate episode
二人目の騎空士
進行度 2/7
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を、油断を生む。
「あっ」
間抜けな声が自身の口から漏れる。ヒドラの尻尾が眼前にあるが避けられない。戦いの途中に無駄な事を考えたからだ。尾は私を強かに打ち、弾き飛ばす。魔術で体を保護したが、無傷なんてわけには行かず、何米だかを飛翔した後受け身も取れないまま私は地面を転がった。
「が、あっ、ご」
「ジータ!」
尾が直撃した腹部が痛みを訴える。まともに呼吸が出来ない。転がったせいで平衡感覚すら狂い天地の方向さえ分からない。焦って握った手には剣すら無い。
そんな私を、抱き締める者がいた。
「グラン……?」
「私は、何も出来ないんですね」
目は霞んでろくに働きやしないけど、声からするに私を抱きしめている人物はルリアなのだろう。
竜の声が近くから聞こえる。――嗚呼。私は、死ぬんだろう。グランとカタリナではあの竜を抑えきれない。ならば、せめて、この少女だけでも守ろう。
私は半ば無意識に魔術を行使した。守護の魔術。私とルリアを守る盾を。……そんなものでヒドラの攻撃から身を守れるわけないけど。
「ルリア!」
カタリナの緊迫した声。最期の時も、近いってことか。
漸く回復してきた視界の中で、カタリナはルリアに寄り添った。視線を動かせば、ヒドラが魔術を行使している。巨大だ。私が貼った魔術よりもずっと緻密でずっと強力な魔術。ここいら一体を焼き払う程の業火を生む魔術。私の魔術じゃもって数秒。
ヒドラが魔術を行使する間際、グランも私に寄り添ってくれた。そうして彼も魔術を使う。私よりも少しばかり複雑で、ちょっとばかり強力な盾。グランはそれで四人を包んだ。
「グラン」
呟く私にグランは笑顔を返してくれる。その盾をグラン一人に貼れば彼は生き延びれよう。しかし四人に貼るとなると耐えきれないだろう。けれど、彼と私の盾を合わせて使えば私とルリアは生き残れる。つまり、グランは死ぬつもりなのだ。私とルリアを残して。
――ああ、もう。団長だけが生き延びれられるかっての。
私が自身の盾の範囲を私からカタリナに代えてすぐに、一体は業火に焼かれた。グランが貼った盾に亀裂が入る。そこからすぐ熱気が中に入る込む。
熱い。熱い。熱い。
外の業火が弱まり初めた頃、とうとうグランの盾は割れた。一拍遅れて、私とグランを業火が包む。
熱い。熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い痛い痛い痛い痛い苦しい止めて熱い痛い助けてグラングラングラングラン、グラン!――
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