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二人の騎空士
The fate episode
二人目の騎空士
進行度 2/7
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がそう問えば、カタリナは自嘲的に笑う。
「証明できるものはないが、全て本当のことだ、としか私は言えない。無論、協力を申し出るつもりもない。私は私が出来ることを為す」
 カタリナの言葉に揺らぎはない。故に、嘘をついていたり、決意がぶれていることも恐らくはないだろう。
「七時方向から何かくるぞ!」
 ビィが叫べば、いち早くグランがそれに反応する。
「止まるな、走れ!」
 グランは叫び、そうして立ち止まった。私は振り返ろうとした顔を止め、前を向き直す。彼がそう言ったのだから、彼の言うとおりにした方が良い。カタリナも振り返らなかった。だけれどルリアは振り返り、そうして立ち止まってしまった。
「ルリア!」
 カタリナが焦って声を張り上げるが、ルリアに気にする様子はない。ルリアはただ、後ろを振り返っているだけ。致し方なく私とカタリナが振り返れば、そこにいたのは、竜だった。
「ヒドラ」
 傍でルリアが小さく呟く。何のことかと考えた時、ふと、この竜の名前なんじゃないかと思い至る。ヒドラ。確か、嘗て星の民が作ったと言われる古代兵器、星晶獣の内の一体の名前。
 ヒドラは暴れまわっていた。それこそ無差別に、帝国軍だろうがグランだろうが、目の当たりにした者に攻撃を加えていく。グランは避けて生き延びているが、帝国軍は一人、また一人と体を裂かれ、焼かれ、潰され、無意味に命を消費していく。
「可哀想」
 ルリアのその呟きは、死んでゆく帝国兵に向けたものか。自分たちを逃してくれたグランに対するものか。――それとも、暴れまわるヒドラへと投げられたものか、私には判別がつかない。
「行くわよ!」
 私はグランの行為を無駄にするわけにはいかなかった。とにかくこの場を離れなければ。
「難しそうだな。帝国軍は死にすぎた。やつは次に此方へ来るぞ」
 カタリナの言うとおり、既に動く人はグランのみで鎧を着た帝国軍兵士は皆地に伏している。グランの動きも、普段に比べて緩慢だ。午前いっぱいを私の稽古に付き合ってくれて、その後すぐに実戦なんだから当然だ。
「グラン、下がって!」
 グランは私達を確認すると、一歩前へと踏み出す。何で、何で下がってくれない。
「意地っ張りめ。加勢しよう。どうせやつを倒さなければ逃げおおせない」
 カタリナの言葉にハッとする。そうだ、彼は言ったじゃないか。止まるな、走れと。彼が殿となると言ったのだから、引くことはないという事か。
 私とカタリナがグランに合流し、ヒドラに攻勢をかける。――だが。ヒドラの厚い鱗は剣を弾き、魔術を防いだ。私たちは少しずつ消耗し、後退し始める。敗走は出来ない。ヒドラのほうが移動は速いだろうから無意味に背中を見せるだけになる。しかし、ヒドラには勝てない。どん詰まりの状況。刻一刻と悪化していく戦況。……それが、致命的な焦り
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