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二人の騎空士
The fate episode
一人目の騎空士
進行度 1/3
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方を振り返った。
「口を慎めベアトリクス。少なくとも、事態はきちんと把握しなければならない」
 ベアトリクスと言われた女性は肩を竦ませた。
「して、話を聞きたいのだが――」
「何をぐずぐずしているか! 早く叩き切るなりなんなりしろ!」
 バザラガの発言を遮って、中年の男性が玄関口から此方へ向かってきていた。勝手ながら、バザラガという男性に同情する。彼の思惑を理解し行動してくれる人間は彼の周りにいないようだ。
「黙れ屑が。首が繋がっている内に金を払うんだな」
 私が脅すように剣を抜き男性へ向けた瞬間、場の空気は変わった。先程までのバザラガが作っていた剣呑なれど殺気はない場から突然に、害意で空気は満たされた。
 バザラガが此方の剣を弾きに一歩踏み出す。身丈も力も得物の重ささえも違う故に私は避けるしかない。私が大きく身を後ろに下がれば彼の切り上げは空を裂く。
 追撃をかけるはベアトリクス。バザラガを庇うように、なれど同時に此方を討たんとばかりに勢いをつけた上段斬りを私に放つ。……崩すならば、今。
 下がりつつある足を緩める。私の後退速度が下がった故に、ベアトリクスの前へと動く速度も下がる。それは剣の切っ先数寸の一番力が乗る部分で切るかかる故に起こる動作である。私はその極僅かな減速を見逃さず、尚半歩の半分ほど下がる。
 ベアトリクスの切っ先が、前髪を数本散らし、眼球僅か二寸先を薙ぎ、外套を切り裂きながら、しかし肉一辺足りとも傷つけず私の前を走る。凍りつくはベアトリクスの表情だ。安心しろ、殺すつもりは毛頭ない。
 踏み込みつつ、ベアトリクスの水月に掌打を放つ。僅かながらにも魔力を使った身体強化のお陰で普段の数倍の威力を伴ったそれは、ベアトリクスの体を浮かせ背後のバザラガの元まで飛ばす。バザラガはそれを受ける事なく、鎌の柄で横へ払った。
「がっがあ」
 地に落ちたベアトリクスが呻き声を上げる。常人ならば即死の威力だが、彼女自身に強い加護がかかっていた故に内臓破裂などは起きてはいないはずだ。それくらいに調整してある。
 バザラガは隙を見せないようにゆっくりとベアトリクスの前に移動する。この男、一筋縄ではいかないか。
「バザラガ、と言いましたか。話をしましょう」
 私は中段に構え直していた剣を下げ、無構えとなる。
「……分かった」
 バザラガの返答に安心する。至近距離、秒の十分の一の足りとも無駄に出来ない殺陣の中で、相手の顔、特に視線や口元が見えないのは不利だ。息を吸いながら攻撃なんてできる訳がなく、喋るなんてことは以ての外。敢えて此方がそうしたことにより信頼を得ようとする腹積もりだったが、うまくいったようだ。
「まずは謝罪させて頂きたい。そこのベアトリクス嬢とやらは暫くは立ち上がれないでしょう」
「此方とて武器を携え剰え先に剣を振
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