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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第三十五話 秘密
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ルクを見た。二人とも厳しい表情をしている。どうやら想像以上にキスリングの抱える秘密は大きいらしい。
「そうだ、それでも知りたい。俺はあの男と約束した。あの男はその約束のために命を懸けたのだ」
太く響く声だった。キスリングがオフレッサーを見る。少しの間二人は見つめあった。
「話してくれ、少佐」
オフレッサーが低い声で勧めた、そしてキスリングが一つ溜息を吐いた。キスリングは視線を天井に向けゆっくりと話し始めた。
「……帝国歴四百八十三年、第五次イゼルローン要塞攻防戦が有りました。その戦いの中でエーリッヒ・ヴァレンシュタインはカール・フォン・フロトー中佐を殺害し同盟に亡命しました。その殺害理由は未だに判明していません……」
その通りだ、ヴァレンシュタインが何故フロトーを殺したのかははっきりしていない。二人の間に接点は無い、怨恨、金銭トラブル等は無かった……。フロトーはカストロプ公に仕えているがカストロプ公とヴァレンシュタインの間にも何の関係もない。
大体片方は財務尚書を務める大貴族、もう片方は兵站統括部の一中尉、どう見ても関係は無い、結局戦闘中に両者の間に何らかのトラブルが生じ殺人事件になったのだろうと言われている。
「フロトー中佐がエーリッヒを殺そうとしました。カストロプ公の命令です。そして今から八年前に起きたエーリッヒの両親が殺された事件もその首謀者はカストロプ公、実行者はフロトー中佐でした。フロトー中佐がエーリッヒにそう言いました」
「!」
信じられない話だった。オフレッサーもリューネブルクも信じられないと言った表情をしている。無理もない、八年前の事件、そして二年前に事件、その二つが繋がっていた。そして首謀者はカストロプ公……。評判の良くない男だ、地位を利用した職権乱用によって私腹を肥やしていると聞く。しかし……。
「卿、何故それを知っている? ヴァレンシュタインはその場から亡命した。卿に伝える余裕など有るまい」
俺の質問にキスリングは微かに笑みを浮かべた。
「その場にはもう一人居たのです。そしてフロトー中佐を殺したのはエーリッヒではありません、その男です、ナイトハルト・ミュラー。私同様エーリッヒの親友です」
「……それは、フェザーン駐在武官を務めたミュラーの事か?」
「そうです」
俺とキスリングの会話にリューネブルクが加わった。
「卿、知っているのか?」
「以前、ある任務で世話になった。信頼できる人物だ」
意外な繋がりだ、ヴァレンシュタインとミュラーが親友、そしてあの事件にミュラーが絡んでいた……。
「ナイトハルトは憲兵隊に全てを話そうと提案しました。しかしエーリッヒはそれを拒否した。相手は大貴族です、告発はかえって危険だと考えた。そして帝国に居る事はもっと危険だと考え
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