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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第三十五話 秘密
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めた。しかし声はしっかりとしている。

「敵に刺されたのか?」
「……いえ、そうでは有りません。あの位置に敵は居なかった……」
「味方に刺されたというのだな」

キスリングが頷いた。オフレッサーが俺達を見る。確かにヴァレンシュタインは嘘をついては居ない。キスリングは味方に刺された。問題はそれが誤っての事か、それとも故意にかだ……。

「故意か、それとも誤りか、卿の考えは」
「……」
「心当たりが有るようだな、少佐」

キスリングは何も答えず天井を見ている。オフレッサーがまた俺達を見た。そして微かに頷く……。キスリングは確かに何かを知っている。そして味方に刺される心当たりも有る……。病室の空気が重くなったように感じられた。

「負傷した卿は捕虜になった。覚えているか?」
「何とはなくですが、覚えています」
「では、何故今ここにいると思う?」

「味方が奪還したのだと思っていますが?」
「そうではない、反乱軍が撤退するときに捕虜を返した。意識の無かった卿は反乱軍の士官が運んで来た」
「……」

「その士官の名はエーリッヒ・ヴァレンシュタイン……」
「!」
キスリングが愕然としてオフレッサーを見た、そして俺を、リューネブルクを見る。

「馬鹿な、何を考えている。エーリッヒは、ヴァレンシュタインは何処に居ます? まさか……」
キスリングの顔が強張った。身体を起こそうとして痛みが走ったのだろう、眉を顰め苦痛を浮かべた。

「安心しろ、少佐。奴は反乱軍の元に戻った」
「……エーリッヒ」
オフレッサーの声に安心したのだろう、キスリングは身体から緊張を解いてベッドに横たわっている。

「奴が俺に頼んだ、卿は秘密を持っている。その秘密故に命を狙われた。卿を守ってくれとな」
「……」
キスリングが目を閉じた。

「無事に帰れるとは思っていなかったかもしれん。だがそれでも奴は卿を救うために命を懸けた」
「……馬鹿が……、何故そんな事をする……。俺の事など捨ておけば良いのだ……」
呟くような声だった。

「俺は卿を守らねばならん、約束だからな。だがそのためには卿の知っている秘密が何なのか、俺も知っておく必要が有る」
「……」
キスリングが表情に苦悩の色を見せた。彼は迷っている……、もうひと押しだろう。リューネブルクが俺を見た、俺が頷く。

「少佐、話してくれないか。閣下だけではない、俺もミューゼル准将も力になろう」
リューネブルクの言葉にキスリングがこちらを見た。その表情には未だ迷いが有る。一体この男の抱える秘密とは何なのか……。

「……最初に断っておきます。この秘密を知れば必ず後悔します。何故知ったのかと……。それでも知りたいと?」
意味深な言葉だ。思わずオフレッサーを、リューネブ
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