第二章
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「このことを貴殿にも言っておこう」
「わかった。ではそなたのその獅子の姿をだ」
「見るというのだな」
「是非共な。期待している」
こう告げてだ。そのうえでだった。
ケイローンは今は姿を消した。そうして。
獅子は岩場にその誇りを見せたまま寝てそうして言うのだった。今度は一匹になっていたがそれでもだ。その心に誇りを持って言うのだった。
「ならばなってみせよう。真の獅子に最後までな」
こう言ってそこにいるのだ。彼は今は獅子だった。やがて。
その彼の前に一人の大柄で逞しい男が現れた。その男は半裸だった。
四角く厳しい岩の様な顔もしている。その彼が岩場に四本足で立つ獅子に言ってきた。
「我が名はヘラクレス」
「ヘラクレス。確か」
「この名を知っているか」
「ゼウスの子か」
ゼウスが例によって人間の女と浮気をしてそれでできた子供である。その例に漏れず神に等しい力を持っている。その彼が獅子の前に来たのだ。
そしてそのうえでだ。巨大な棍棒を手に獅子に言ってきたのだ。
「御前には恨みはない。だが」
「俺を倒すというのか」
「そうだ。そうさせてもらう」
「面白い。俺がどういった者か知っているな」
「テューポーンとエキドナの子だな」
「如何にも」
その通りだとだ。獅子はヘラクレスに返す。岩場から彼を見下ろしたまま。
「その通りだ」
「そしてどの様な刃も矢も身体を通さない」
「そしてどの獣よりも遥かに強い力を持っている」
伊達に怪物の父と母の血を引いており巨大な訳ではない。
「その俺をか」
「そうだ、倒す」
ヘラクレスもこう返す。
「この力で」
「ならば来い、勇者よ」
己に、獅子の中の獅子に向かう勇気は認めての言葉だった。
「そして貴様に見せてやろう。真の獅子を」
「行くぞ」
ヘラクレスはその棍棒を手にして岩場を駆け上がってきた。そのうえで。
獅子と彼は激しい闘いに入った。獅子はその爪と脚、牙を使ってヘラクレスを倒そうとする。ヘラクレスはそれに対して棍棒に手足を使う。どちらも激しい応酬を繰り出し合う。
爪、そして牙にだ。ヘラクレスは傷ついていく。だが、だった。
彼は倒れない。目も死んでいない。そして獅子もまた。
ヘラクレスの棍棒に拳、それに足を受けてダメージは受けていた。確かに彼の身体には刃や弓矢は通じない。だがそれでもだったのだ。
「打撃は効くな」
「そのことを知っていたのか」
「いや、知らなかった」
獅子がダメージ自体を受けることはだというのだ。
「だがそれでもだ」
「闘うつもりだったのか」
「この世に弱点のないものなぞいない」
例えそれが神であっても
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