5 殺意
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字で『save me please』と朱い血液で書かれている。
これは女のダイイングメッセージなどではない、少女の左手が手首まで血で染まっている。
解体した女の傷口に幾度か手を突っ込み、壁に綴ったのだろう。
ドクン、と心臓が掴まれる様な感覚を感じた、初めてかもしれない。
彼、須佐之男は喧嘩に、試合に、戦争に、死合に、あらゆる戦闘に明け暮れた日々を過ごした。
ゼロに忠誠を誓った理由ですら、ただ闘いたかったからだ。
強敵と戦う際、いつも感情が精神が心臓が昂っていた。
だが、今回だけは何かが違う、直感全てが語りかけているのだ、
危険であると。
少女は立ったまま下を向いて動こうとしない、カーディガンには血が染み付き、片目は髪で隠れ、見えるもう片方の目は虚ろ。
バタフライナイフからピチョン、ピチョンと血が一滴、また一滴と地面に落ちていく。
異能者となった無能者などではない、奴らは近づいたものを機械的に攻撃しか出来ないからだ。
「…おい、貴様」
「…」
「ここは何処だ」
「…」
「その女は、なんだ」
「…」
少女の目は変わらない、深黒の眼のまま、虚空を向く。
須佐之男は解体された女の首を一瞥した後、腰の刀に手をかける。
「不快だ、去ね」
横薙ぎ一閃。
一筋の斬撃が雨と共に少女の首を無残にも切り落とす筈だったろう。
一閃ともに少女の身体は霧散し、前方の『霧』が消える。
そこには少女もバラバラの死体もない。
だが未だ、櫛名の姿はどこにもない。
須佐之男は刀を鞘に戻しつつも刀の持ち手に手を添えて警戒を怠わない。
構えを取り、ありとあらゆる方向からの攻撃を想定する。
(幻覚の異能者か…だが)
彼は霊遥葵雄大や速水風間、それ以外にも手練のものと闘い有ったかなりの戦闘経験者である。
目を閉じて五感。いや、六感全てを極度集中させる。
空気をピリピリと肌で感じている。
雨は相変わらずポツポツと降り注ぐ。
水たまりの波紋は一つ、また一つと量を増していき、彼は水の音を聞き、数字を唱え始める。
「弌。」
と
「弐」
持ち手にかけた手に水滴が落ちる。
「斬…」
空気が動く。
カッと目を開き、刀を握る手を強める。
黒い影が視野に入ると共に渾身の抜刀を発破する。
「死ッ!」
再度一閃。
現れた少女はその刀を後ろに二歩、紙一重で避けると水溜りを踏み込んでナイフを逆手に走り出す。
須佐之男がニィと笑って拳を握りしめると少女が踏んだ水溜りの波紋から幾数もの手が現れ、少女の身体を拘束した。
須佐之男は少女の首へと刀を向けて首に触れたところで刀を止める。
しかし少女は表情を一切として変えず暗い目で刀をただ見つめる。
「ではさらばだ」
刀が肉
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