神風と流星
Chapter2:龍の帰還
Data.32 End of Act
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ら。
何故、俺が背後に投げ捨てたはずのポーチが、初めに道化竜のいた位置にあったのか――――それは、そのポーチがそこへ転移させられたから。
つまり、道化竜の転移能力は――――
「――――転移じゃなくて置換!自分のいる空間と指定した空間を入れ替えてるだけだ!」
おそらく入れ替える空間には前兆として揺らぎができるのだろう。それを見られて何かに感づかれては困るから道化竜はプレイヤーの背後にしか転移しなかった。飛ばないのも似たような理由で、転移した後に空間に違和感が出るからだ。地表近くは砂っぽいし、逆に上空は何もない。入れ替えてしまえばどうしても周りの空間になじめない。今まであった砂埃がそこだけ綺麗になくなっていれば、いくらなんでも気付かれる。
そして俺がこのことに気付いた最大の理由は、俺のポーチの位置が変わっていたこと。
その空間に存在するアイテムごと置換してしまうため、後ろに投げたポーチは空間置換に巻き込まれて道化竜のいた空間に落ちたのだ。
そして、ここまでわかってしまえばなんてことはない。
「俺はお前が消える瞬間に後ろに向かって飛べばいいだけだ。そうすれば俺とお前のいる位置が変わるだけで何の被害もない。俺の後ろ以外に転移するならそこに向かってあらかじめ攻撃を仕掛ければいい」
プログラムで動くポリゴン体にすぎないはずのその顔が、奇妙に歪んだように感じた。
それがこの渓谷の主のものだったのか、それともその行動プログラムを司るカーディナルシステムのものだったのかはわからない。
だが、これで俺の優勢は決まった。タネの割れた手品は怖くないし、あとはブレスにだけ気をつけて攻撃していればいい。
しかし、愚直に転移と攻撃を繰り返してくる道化竜の急所を的確に攻撃し、いよいよ残り一割となったところで問題が発生した。
「あ、れ……?」
ナイフを取り出そうとポーチへ向けた手が、虚しく宙を切る。
「このタイミングで品切れかよッ!」
振り下ろされた尻尾は辛くもかわすが、さて困ったどうしよう。
仕方ない。こうなったら最後の手段だ。いいとこ取りされるのは癪に障るが、まあいつものことだ。気にしないことにしよう
実は少し前から洞窟の入り口でこっそり観戦してる奴らに目線を配りつつ、俺は大きく息を吸って全力全開の大声で叫ぶ。
「出番だシズク!美味しいところはくれてやるから決めてこい!」
「さっすがルリくん!愛してるぜ!」
タンッ。タタンッ。タタタタタタタタタタタタタンッ。
徐々に早く、数秒で最高速度へ。
どうやら先ほどボロボロにされたのが悔しかったらし
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