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神風と流星
Chapter2:龍の帰還
Data.32 End of Act
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ああああああっっっ!!!!!!」

 姿勢を低く、つま先を垂直に立てるようにし、ひたすら蹴りだす。

 シズクを真似てやってみたが、案外イケるもんだな、壁登り。

 ブレスは岩壁に激突して霧散し、俺は適当なところまで登った後、地面に下りる。そして反撃としてそろそろ本気で数が心許なくなってきたナイフを投擲。

 今度は普通のナイフだったため鱗に弾かれただけで終わった。ちゃんと体勢を整えてから目とかを狙って投げるべきだったなチクショウ。

 真銀製のナイフは残り一本。他のナイフじゃマトモにダメージを与えられない。

(さぁて、どうしたものか)

 シズクたちの離脱はとっくに完了している。運よく俺が今いる位置は洞窟に程近く、全力で駆け出せば逃げ込めるだろう。だが、

(それじゃ何も変わらない。最悪、クエストがリセットされてまた最初からだ)

 それだけは避けねばならない。俺の武器は着実に減り、近接組の装備の耐久値も減っている。ここでやり直しになればこの渓谷からの脱出は諦めるしかなくなる。

 無論、俺にそんなつもりはない。

 となればやるべきことはただ一つ。

「シズクたちが戦線に復帰するまで時間を稼いで、少しでも多くの情報を手に入れる」

 まず攻略すべきはあの転移だろう。せめて予兆の一つでも見つけられれば対処はかなり楽になる。

 何か、何かないか。なんでもいい。どんな些細なきっかけでも見つけられれば――――

(ん、いや待てよ。あれは、ひょっとして――――)

 そのとき、俺の視界があるものを捉えた。

(まさか、そういうことなのか。でもそれならアレがあそこにあるのにも説明がつく)

 俺の中で、ある仮説が確信に変わっていく。

(一か八か、試してみる価値はある、か)

 覚悟を決めたなら、後はチャンスが来るのを待つだけだ。

 そして、そのときが来た。

「お、らああッ!」

 前方にあった道化竜の姿が消えるのを見届けるより早く、俺は後ろへ振り返って()()()()()()()()()()()()()を確認し、その揺らぎへ跳んだ。

 一瞬視界が歪み、それが明ければ――――

 ――――やや離れた位置で爪を振り下ろす、道化竜の姿が見えた。

「ハッ!確かに道化の名に相応しいチンケなトリックだな!」

 ここで一つ、情報を整理してみよう。

 何故、道化竜は相手の背後にしか転移しないのか――――それは、転移する先に相手に見られては困るものがあるから。

 何故、道化竜は転移を使い始めてから、上空へ飛翔しないのか――――それは、上空で転移を発動すると困ったことになるか
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