第三話 新たな天使
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た。それなのに今さら……俺にそんな義理はない。助ける必要なんてない。俺はあの人達の事なんて知らない。
目を瞑れ、何も視界に映すな。
俺はクーデリアを助けるんだ。
それだけって手一杯なんだ。だから、もう────止めてくれ。
足が、止まった。
動け。ここで立ち止まるな。
ここで立ち止まったら、ここまで来て止まったら俺は一体、何の為にここまで来たんだ?
クーデリアを、母さんを探し出し助け出す為に。俺は……一体どれほどの人達を犠牲にしてきた?
救いの手を求めて、必死に伸ばしてきた手を無視した意味をここで喪ったら……俺は。
────もう、嫌だ。
「……諦めるかよ」
考えるな。歩き続けろ。
俺は、クーデリアを助ける。
今は、それだけを考えろ。それだけを考えるんだ。
足を前に踏み出せ。ここで立ち止まるな。後ろを振り返るな。前を見ろ。
それでも、聴こえてくる断末魔。
聴き続けろ。そして、忘れるな。
瓦礫の下敷きになった少年。
それを助け出そうとしている中年の青年。
俺の目の前で死んだ女の子。
そうだ、思い出せ。そして、忘れるな。
今、俺が見ているこの地獄を脳裏に焼き付ける。
人が死んでいく。
圧死。
窒息死。
焼死。
周囲に転がっている人間だったそれを。
助けられた救けられなかった命を俺は忘れない。
俺はクーデリアを救うために、他の救えた人達を犠牲にした。一人の人間を救うために大勢の人間の生命を犠牲にしたんだ。呪われても、憎まれても仕方ない。でも、それでも……俺はクーデリアと一緒に生きるんだ。
生きて、母さんの所に帰るんだ。
その為ならなんだってする。生きる為なら、なんだってしてやる。
俺は────。
────生きるんだ。
……ここが、クーデリアの言っていた。
もう、声も出ない。
体力を使い切った。足も震えて動かない。
あと……少し。ほんの、少しなんだ。
あと、もう少しで────。
そこで、俺の視界は途絶した。
「────アカツキ、」
誰の、声だろう。
男の声だ。それも一人じゃない。
複数人の男の声。なんか、身体が揺れてる。
「おい、起きろ。
アカツキ。アカツキー」
「そんな乱暴に起こすんじゃねぇよ。コイツはここまで議長を担いで来たんだ。もっと丁重にだなぁ……」
「そんな事、言ってる場合かよ。
今は怪我人を運ぶのを優先しねぇと……ここもいつ狙われるか分かんねぇだからな!」
「分かってる!でもな、焦っても状況は変わらねぇ。今は冷静になれ、コイツは俺が運
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