第三話 新たな天使
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そろそろ────時間だ。
「……間に合わなかった」
奴が、目覚める。目覚めてしまう。
それだけは阻止しなければならない。
このままでは、覚醒する。
────厄災の天使が再び火星に舞い降りてしまう。
もし、「これ」に記された通りにことが進んでいれば今頃は……。
弱気になるな。ここで諦めたらこれまで積み重ねてきたことが全部パーになっちまう。
後ろを見るな。振り返るのは後でいい。
後悔もそうだ。今は前だけ見て突っ走れ。
そう、自分に言い聞かせ男は自らを奮い立たせる。
今までも、後悔の連続だった。
それはこれからもそうだろう。
でも。ここで立ち止まったら、その後悔さえ無駄になる。だから────今は走れ。
誰よりも速く。誰よりも強く。
これからする後悔を後悔して良かったと思えるように、男は走る。
例え、その道の行先が、後悔しかなかろうと────走れ。
「アカツキー。そこの調味料、取ってぇ」
「これ?」
「その右のやつ、」
「これ?」
「あ、こっちから見て逆の方!」
「分かった……あ、母さん。鍋から黒い煙が出てるよ」
「えっ?
あ、えぇえ!?」
慌てて火を消し、鍋の中身を確認する母さん。
「あちゃ……やっちゃった」
「大丈夫?」
「うん。大丈夫……だと思う」
今の反応からするに鍋の中身は大丈夫じゃなかったようだ。
えへへへ……と誤魔化すように笑ってるけど誤魔化せてないからね。
「さて。もう一回、作り直しますか!」
そう言って、食器棚から新たに大きめの鍋を取り出し食材を入れ始めた。
さっき、料理に失敗したばかりなのに母さんは上機嫌で再び料理を作り始める。
「ふんふんふ♪」
鼻歌混じりの包丁さばき。これは相当、ご機嫌のようだ。
そんなに嬉しんだ。
クーデリアが家に帰ってくるのが。
先日、クーデリアから家に電子メールが届いた。内容は簡単にまとめると「今の仕事がひと段落したので火星に帰ります。早く帰って、アトラの手料理が食べたいです」って感じの文章で、それを見た母さんは昨日からずっと料理を作り続けている。
その量はとてつもなく。
普段、ご飯を食べてるテーブルの上だけじゃあ収まりきらず。収まりきらない分の料理は椅子の上や棚の上に置いている始末であった。
「こんなに作って、食べ切るれるの?」
「一日じゃあ……無理かも。
でも、日持ちするのばかりだから大丈夫!」
「それって大丈夫……なの?」
日持ちするのばかり作っても腐ってしまっては意味がないと思うのは俺だけかな。まぁ、母さんは楽しそうに料理してるしそれを中断させるのも野暮というやつだろう。
だから、俺は母さんの料理姿を
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