SIDE:A
第十四話
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そこにいたのが、血を分けた実の弟――サスケだと理解した。反射的に苦無を持つ手が止まる。
首を掴まれ気道を圧迫されているサスケは、目の前の忍びが尊敬する兄だと分かると困惑した表情を浮かべた。
アカデミーの帰りだったサスケは里の異様な雰囲気に不安を感じ、急いで帰宅してきたのだ。いつもは誰かしら人の声が聞こえるのに、今は不気味なほど静かで、まるで里の人たちが全員消えてしまったかのような錯覚すら覚えた。
帰宅したサスケは真っ先に両親の元へ向かったが、そこにいたのは血の海に沈む父と母の姿、そして不審な忍。咄嗟に口元を押えて悲鳴を押し殺し、襖の影に隠れた。その時に物音を立ててしまったのだ。
瞬く間に忍びに拘束されたサスケは、その者が実の兄だと知り困惑した。
血の海に倒れる両親。不審な忍びが尊敬する兄。倒れ伏した両親と兄。
いくつものファクトが浮かんでは消え、認めたくない事実を突きつけてくる。
ダメだ、違う、と。心の中で言い訳を繰り返して必死に目をそらす。
それを認めてしまえば、自分の中の何かが壊れてしまう気がして。
絶対に認めるわけにはいかなかった。
「――誰かと思えば、愚弟か」
無造作に投げられる。床に打ち付けられたサスケは痛む体に顔をしかめながら、それでも困惑した顔で兄を見上げた。
「に、にいさん……?」
うちはの天才と呼ばれ将来を有望視されている兄はいつも自分に優しくしてくれた。
いつも仕事で忙しい兄に遊んでと強請ると、陽だまりのような温かい眼差しとともに額を小突く。苦笑しながら「許せ、サスケ」と優しく小突かれるのがサスケは好きだった。
こんな、路傍の石を見るような冷たい目を向けるような人ではなかった。
「なんで、父さんたち倒れてるの……? あんなに、血がいっぱい――そ、そうだ! は、早く助けないとっ!」
兄さんなら助けること出来るだろう!? そう言葉を続けるサスケを無表情な顔で眺めていたイタチ。
そして、弟にとって残酷な真実を告げた。
「無駄だ。その二人はもう目を覚ますことはない」
「え……?」
「事実から目を背けるな。お前が見ていた通りだ」
淡々と事実を告げられたサスケは顔面を蒼白にした。
口を戦慄かせ、掠れたような声で呟く。
「どう、して……」
なぜ兄が両親を殺したのか。その動機が分からなかった。
サスケが見ていた限り兄と両親の仲は良好だった。昨日も家族四人で談笑しながら美味しいご飯を食べたのだ。
どこにでもある幸せな家庭。昨日まで続いていた日常が唐突
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