SIDE:A
第十四話
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夜の帳が下りた、曇り一つない空。美しい満月が輝く夜空の下を、忍び装束に身を包んだ一人の忍びが闇に紛れて疾走していた。
闇から闇へ、影から影へ移動する。忍びがいる場所は木の葉の里。うちは一族が住まう地区だ。
夜遅いため外を出歩いている人はいない。しかし、町中がひっそりと静まり返り、物音一つしないのは異様だった。人の気配がまるでない。電灯がついている民家もあるが、どの家も生活音の一つもなかった。
闇に紛れて走る忍びがとある民家の前にやって来る。物音一つ立てないで内部に侵入すると真っ直ぐ進み、とある部屋の中に忍び込んだ。
部屋にはこの家の住人である夫婦が布団を並べて眠っている。それを見た忍びは背中の忍刀を抜いた。
「……」
無言で刀を逆手に持ち替え振り上げるが、暫しその姿勢のまま固まる。どこか葛藤に苛んでいるようにも見えた。
「……そうか。それが、お前が選んだ答えか」
「……っ」
仰向けの姿勢で眠っていた男性が目を瞑ったまま静かに呟いた。声を詰まらせる忍び。明らかに動揺していた。
「それがお前の選んだ答えならば、私たちはなにも言わない。私もミコトも、すでに覚悟の上だ」
「――父上」
「イタチよ。お前の親として、最期の頼みだ」
「……はい」
「サスケを、頼んだぞ」
忍び――イタチは実の両親の最期の頼みに無言のまま頷く。声を殺して涙を流しながら、刀を振り下ろした。
せめて苦痛を与えず安らかに逝ってほしい。その思いの元振り下ろした刀は痛みを与える間もなく、実の両親に引導を渡した。
十三年間、確かな愛情を注いでくれた実の両親が物言わぬ骸と化し、真っ赤な雫が滴り落ちる刀を手にしたまま暫し項垂れる。
暗部に所属している身として様々な人間を手に掛けてきた。その者の善悪など度外視して、ただ任務に忠実に。
敬愛している両親や家族と言っても差し支えのない一族の人間を手に掛けたという事実が十三歳の少年の肩に重く圧し掛かる。常人なら暫し気持ちの整理に時間がかかるだろう。しかし、幸か不幸かイタチの心は強かであり、事実を受け止め背負うことができる強靭な精神力の持ち主であった。
黙祷を捧げたイタチは刀を振るって付着した血糊を飛ばすと納刀する。
不意にガタッと物音が背後から聞こえた。
俊敏な動きで背後の襖へ駆け寄り、力強く扉を開け放つと同時にそこにいた人影の首を掴み壁へ押し付けた。太もものホルスターから苦無を抜き放ち、人影の心臓目掛けて突き刺そうとし――。
「――っ」
「へ、ぇ……ぁ……に、にい……さん……?」
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