現世
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1945年(皇紀2605年)7月上旬 北九州上空
そこには空を埋め尽くすほどの数の重爆撃機、B29がエンジンを轟々と響かせて飛んでいた。
「ザザッ 見つけた!B公は二時方向の上空にいるぞ!全機かかれ!」
それを受信した各機はB29を撃墜すべきその方角に向かっていった。
その中の一人の紫電改パイロット 北上 晃上飛曹はB29の編隊に突っ込んで行った
「よし、行くぞ!絶対に撃墜してやる!」
そう意気込んで近づくも、強烈な対空砲火が機体を襲うがその隙間を縫うようにして近づき、機銃を放った! タタタタッ! 20mm機銃を四門から発射された弾丸は見事にB29の翼をへし折り、撃墜した。
「一機撃墜!」 そう言って周りを見渡すと、他の機もB29に銃撃を加えており、一機、また一機と敵が落ちて行くのが見えた。この当時日本軍の戦闘機パイロットの練度は低いものが多かったが、晃が所属する三四三空には優秀な人員が配備されていたのである。
閑話休憩
さらに敵を撃墜するために反転し、敵機の機銃死角から突入した晃上飛曹は撃墜こそできなかったものの、エンジンから火を吹かせることに成功した。「もう一機行きます!」 そう言ってさらに反転し、先輩パイロットの「無茶するなよ!」という声を聞きながら敵機の下側から機銃を放とうとしたところで、不運なことに弾づまりを起こしたようで、弾が発射されなかった。
「弾づまりか!くそっ!」そう悪態をつきながら離脱しようとするも、敵の対空砲火が一気に襲ってきた。ほぼ全方位からきたため、避けることが出来ずに直撃を何発ももらってしまった。
カンッ カカンッ っと銃弾がコックピット内を飛び交う。その弾丸が腹に当たり、激痛が走る、さらにエンジンにも被弾したようで火が出ていた。
(このまま死ぬぐらいならいっそ!)そう思った晃は近くののB29に狙いを定めてさかさ落としで突撃した。「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」近づくにつれて弾幕は密になり、被弾も多くなるがそれを全く意にせずに突撃して行った。そしてみるみるうちに敵が大きく見えるようになり・・・
ズドォォン! 敵機に体当たりをしたのだった。
最後に見えたのは、上部機銃座にいた敵の恐怖に歪んだ顔と、炎であった。
そうして北上晃の人生はその幕を下ろした。
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