暁 〜小説投稿サイト〜
俺たちで文豪ストレイドッグスやってみた。
第5話「汝に幸あれ」
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だった。
 歪む。空間が。それはある意味で健のそれと同じで、しかし根本的に違う能力。

 健のそれは、空間を歪ませ『飛ぶ』技術。制約も多々ある代わりに、汎用性も高い。
 たいして『それ』は、ただひたすら『繋げる』ことに特化した(わざ)。汎用性を犠牲にした代わりに、「その目で実際の場所を見る」というただそれだけで、ありとあらゆる空間へと、自由自在に『扉を開く』。

 異能名、『その扉の向こう側に』。

 それを持っている人物は、一人だけ。

「みんな大好き、ろーがさんの登場だよ」

 黒髪の少年が、立っていた。先ほどまでは誰もいなかったはずの、健達の背後。机の上??健が、祐介から奪い取った書類を置いていた、机の上だ。そこに、黒鉄狼牙が腰かけている。

 にまにまと笑う彼の姿を見た瞬間、図られた??と、直感的に、健は悟った。同時に心の中で、何度も舌打ちをする。
 祐介は、別に不用意に書類を持ち歩いていたわけではなかったのだ。健が彼の考えることをすべて把握できるのと同じように、彼もまた、健が考えることすべてを思いつく。
 そして、決定的に二者を分けるのは??備わった、『幸運』だ。

 祐介は、健の思い通りに動くことは無い。祐介の幸運が、健の思い通りに動かない未来、即ちは自分に有利な未来を引き寄せるからだ。
 健は、祐介の思い通りに動く。なぜなら、祐介の幸運が、健が思い通りに動く未来を、つまりは自分に有利な未来を引き寄せるからだ。

 完全に見透かされていたのだ。健が祐介から書類を奪うということは。
 完全に予定されていたのだ。健が??すっかり、狼牙の能力の発動条件に関する考察を忘れているということは。

 『その扉の向こう側に』は、「一度見た場所」をトリガーに、あらゆる場所と場所を繋げる力だ。だが、「場所」というのは、いったいどのような基準で選ばれているのか?
 簡単だ??能力者の、主観である。

 例えば。祐介が、書類をどこかの机の上に置いたとして。
 その上に狼牙が立つとして。

 ??『書類の上という場所』を、『扉』を繋げる先の風景として、登録していたならば。

 あの書類を健が奪い取り、そして机の上に置いた、という時点で、このプライベートルームは、彼の転移の範囲内……!

「やぁ……エース君」

 背を伝う冷たい感触を必死で押さえつけながら、健は少年に呼びかける。彼はその名を聞いて露骨に顔をしかめた。

「その名で呼ぶな」

 冷たい、氷のような。いや??獣が、冷酷に獲物を狙うような、目。それはその場にいる人間を。特に、戦いに慣れない絵里を凍り付かせるのには。十分だった。

「まぁいいです。そんなことより皆さんに残念なお知らせでーす!」

 次の瞬間にはいつもの明るい
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