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蒼き夢の果てに
第7章 聖戦
第167話 ヴァレンタインの夜
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ンだと持ち上げられても、一皮むけば所詮そんな物。
 結局あの時も俺は一人ではなかった。いや、当時の俺自身は一人だけで生きている心算だったのだが、一人で出来たのは闇に堕ちる事だけ。助けてくれたのはかつての仲間たち。
 三娘と玄辰水星。
 結果、俺自身はあの事件で命を落としたのは間違いない。しかし、本当にギリギリのトコロで踏み止まれたが故に。……彼女らによって正気に戻されたが故に、現実世界に水の邪神が顕われる事もなく事件を終結させる事が出来た。

 彼女と、その仲間たちの術者が創り出した奇門遁甲陣と、俺の次元を切り裂く能力を使い、半ば以上、現実界に実体化し掛けた水の邪神を、もう一度、奴が眠る神殿に送り返す事に成功した……と言う事。

 長い思い出話。信じる、信じないは彼女の自由。但し、この混乱したハルケギニア世界。クトゥグアやハスター、それに這い寄る混沌らしき存在が顕われているのに、何故か水の邪神クトゥルフが顕われていない理由の説明ぐらいには成る。
 何にしても――

「よほど誕生してから間がない新しい魂か、畜生道に堕ちた魂でもない限り、この程度の間違いや失敗は存在しているはず」

 タバサが経験した前世での失敗も、それほど珍しい物ではない、と思うぞ。
 世界は無数に存在している。仏教用語で言うのなら三千大千世界……と言うヤツ。千の世界が集まった世界の集合体が更に千集まり出来上がった大きな世界。その大きな世界が更に千集まって、すべての世界を構成している……と言う思想。誰かがこう言う平行世界もあるんじゃないか。そう考えただけで、新しい世界が誕生している可能性すら存在している。それぐらい、無数に存在しているのが、今、俺が暮らしている世界。
 その中のひとつの世界。更に無限に続くかと思われる転生の中で一度ぐらい、タバサのような失敗をしていたとしても何も不思議ではない。

 寝台の上に座る彼女。俺の言葉でも心は晴れないのか、未だ彼女の発して居る気配はどちらかと言うと陰の気配。
 う〜む、矢張り彼女も少し生真面目すぎる。確かに俺も人の事は言えないが、もう少しいい加減でも良いとも思うのだが。

 ひどく分かり易い仕草で肩を竦めて見せる俺。先ほどの言葉で無理ならば――

「それで、ひとつ気になったのやけどな――」

 それまで置いていなかった枢機卿。そいつはタバサが選んで……。オマエさんの国を発展させる為に絶対に必要だと考えて、オマエさん自らが選んだ人間やったのか?
 別の切り口から問い掛ける俺。ただ、何となくなのだが、彼女がこの世界に転生して来た理由。更に言うと、彼女に加護……それもどう考えても破格の加護を魔女の守護者ヘカテーが与えている理由がようやく分かったような気がする。

 要は、彼女には無念に思った、感じた前世があ
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