第7章 聖戦
第167話 ヴァレンタインの夜
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りとなる作り話をしている。そう取られたのでしょうが……。
「あの人生の俺は火眼金睛。普段はそれほど目立つ訳でもなかったんだが、霊気が高まるととてもではないが人間として見て貰えるような外見ではなかった」
その心の隙間を魔に突かれて仕舞った。
元々、俺の魂が持っている能力は重力を操る能力。その力を使って次元に穴を開け――
「結果、水の邪神を呼び寄せて仕舞った」
元々、木行の強すぎる俺を糧にしようと……いや、彼奴に。あの水の邪神にそれほどの知能がある訳はないか。
あの当時は分からなかった――事件を解決するだけに手一杯で、その事件が起きた理由やその他の事象について考える余裕など存在しなかった。
しかし――
しかし、今ならば分かる。あの事件の裏側にも、今、このハルケギニア世界を混乱させている元凶の嫌味な笑みが存在していた事が。
「世界が滅ばなかったのは、奴が顕われたのが夢の世界だったから。ただそれだけ」
ある事件の捜査……と言えば聞こえは良いが、要は異世界からの侵略者。俗に言う、悪魔やソレに類する者たちを狩り、賞金を得て居た術者の集団をおびき寄せ、その地を特殊な結界で覆う事により、夢の世界と直結させる。
大がかりだが、非常に単純な罠に落ちた俺たち。実際、街のすべてを覆い尽くす結界などあまり現実的ではないし、そもそも、現実世界と夢の世界の境界線を曖昧に出来る存在など余程の神話的な裏付けを持つ特殊な存在しか居ない。
流石に単なる神隠しの調査。霊的な事件などではなく、一般人が引き起こした誘拐事件の可能性すら存在していた事件の調査として術者の協会に依頼があった事案で、最初からそのような特殊な事件を警戒する訳はない。
その夢の世界こそ、海底に沈んだ石造都市ルルイエに眠る奴の夢の世界だった。
「その奴の見ている夢の世界と、其処におびき寄せられた術者たちの見る夢の世界の境界を俺の次元を切り裂く能力で開き、その夢の世界……人間それぞれが深い所で繋がっている意識と無意識の狭間の世界から、現実世界に至る道を創り出そうとして、その先兵として使われた」
胸糞の悪くなる話。初めから俺一人をターゲットにした企みだったとは言えないが、結局、這い寄る混沌に踊らされるだけ踊らされて、挙句、一度は水の邪神に完全に取り込まれたのだから。
……まぁ、こんな前世があればハルヒの事をとやかく言えないのは確かだな。
「この人生の結果で良かった事と言えば、あの水の邪神がこのハルケギニア世界に絡んで来られなくなった事ぐらいか」
流石に、あの場所に封じられると、そう簡単には出て来られないはず。
我知らず浮かべている自嘲の笑み。
「こんな俺でも転生して、ここにこうやって生きていられる」
英雄王だ、何だカ
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