第7章 聖戦
第167話 ヴァレンタインの夜
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女の手製。それもカカオから作り出したと思われるチョコレートを見つめながらそう聞く俺。もっとも流石にコレでは色気も何もない、妙に事務的な対応だと思うのだが……。
ただ、何にしてもこれで、このハルケギニア世界で最初にチョコレートと言う食べ物を作り出したのが彼女と言う事に成るのだと思う。
悪い魔法使いにより異世界に流された恋人を自らの手で救い出す少女の伝説か。胡散臭い撲殺された司教さまの伝説よりもよほど恋人たちの記念日に相応しい物語に成りそうだな。
別にヴァレンタインデーに対して含むトコロもないのだが、相も変わらず皮肉に染まった思考でそう考え続ける俺。まぁ、ブリミル教にはそのような浪漫に溢れた伝承もなければ、ハルケギニア世界にはルペルカリア祭に相当する祭りも無さそうなので……。何せ、二月を表現するハガルはおそらく雹を意味するドイツ語か、もしくはルーン文字から出来た言葉だと思う。但し、地球世界のルーン文字に関して言うと本当にハガルと発音していたのかどうかは、実は定かではない。
……と言うか、ハルケギニアの言葉の基本はフランス語。但し、魔法に関しては英語が基本だし、月に至ってはドイツ語が混じるって……。
トライアングルは英語。フランス語ならトリアングル。ラインも同じ。フランス語ならばリーニュと発音する……はず。ドットに至ってはポワン。英語でこれに対応する言葉はポイントだったと思う。
このような部分にも何モノかの介入の跡が窺えるな。大航海時代が訪れていない……新天地を探そうともしない中世末から近世初頭のヨーロッパ。しかし、何故か統一言語が存在する世界。
何処から何処までがこの世界のオリジナルで、何処からが改竄された部分なのか。この辺りを完全に解き明かす事が出来たのなら、この世界……仮にハルケギニア世界と俺が呼んでいる世界の未来を覆う暗雲を振り払う事が出来るのかも知れない。
何度も何度も同じような時間や世界に転生している理由。この辺りも関係しているのかも知れないな。
何か重要な部分を掴み掛けたその時、タバサが小さく首肯き現実世界に呼び戻される俺。
そしてその後、俺の瞳を覗き込んで来る彼女。
この感覚はもしかすると……そう考え掛け、直ぐにその考えを心の中で否定する俺。もしかしなくてもコレは間違いなく俺の思考が彼女に向かっていなかった事に気付いた、と言う事だと思う。
二人の間に流れる一瞬の空白。その空白は彼女と、そして俺の逡巡を意味する時間。
そして――
「一緒に食べましょう」
普段通りの淡々とした。何の感情も込められていないかのような、妙に無機質な口調でそう告げて来るタバサ。
彼女の指先には一欠けらのチョコレートが――
但し――
その内容にかなりの違和感を
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