第7章 聖戦
第167話 ヴァレンタインの夜
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バサの部屋は隣に用意されていたはずなのだが……。
つまりこれは、俺を再召喚した今宵、彼女は自らの部屋に帰る心算が最初からなかった事になる……と思うのだが。
やれやれ。少なくとも有希と彼女の間には何らかの取り決めがある。そう感じていたけど、今夜は彼女の番だった。そう言う事なのでしょう。
故に、先ほどの質問「何故、彼女を……」と言う問いに繋がった。
目の前でリボンを解き、包んで居る紙――地球世界なら包装紙と言うべき代物を外すタバサを見つめる俺。そう言えば今日。もしかするともう既に昨日に成っている可能性もあるのだが、ハルケギニアの暦で今日はハガルの月、ヘイムダルの週、オセルの曜日。
地球世界風に表現すると二月十四日。
つまり――
「聖ヴァレンタインデーと言う事か」
目の前に差し出されたチョコ入りの小箱を見つめながらそう言う俺。まぁ、流石にオツムの出来が非常に残念な御方がやる、自分にリボンを付けて出て来る、などと言う状況にならなかっただけでもマシか。
流石にソレを現実にされると、百年の恋も吹っ飛ぶ――少なくとも俺はそう感じると思うから。
もっとも……。
そもそもそのヴァレンタインデーと言うのはキリスト教から見ると邪神ユノの祭り、ルペルカリア祭を潰すためにでっち上げられた非常に胡散臭い祭り。むしろ奴らに相応しい、邪悪な意図に因り創り出された奇習と言うべき代物だと思う。当然、その物語の中心に存在している、生け贄にされた司祭さまが現実に居たのかと言うと……この部分に関してもかなり疑問が残る。
……と言うか、
「カカオはハルファスに調達して貰ったのか」
大航海時代が訪れていないハルケギニア世界に南米産の作物はまだない。この辺りもアルビオンが浮遊島になったのが、俺が召喚される五分前の出来事ではなかったのか、と言う推測の根拠となっているのだが――
蒼穹を飛ぶ魔法や飛竜、より高々度を飛行可能な飛空船が存在しているのに何故か海の向こうに渡ろうとは考えない中世ヨーロッパの人間。これはかなり異常だと言わざるを得ない状況だと思うのだが。
中世ヨーロッパの生産力や閉塞感を知っているのなら。
地球世界の中世ヨーロッパなら、イスラム圏に対する輸出品の中に奴隷が存在していた。それも去勢された白人男性の奴隷が。それぐらい、何も輸出する物のなかった貧しい地方だったのだ、地球世界の中世ヨーロッパと言う地方は。時代的に言って其処と対応する地方として考えるのなら、このハルケギニア世界に暮らす人々の外へ向かおうとする覇気の無さは異常。
もしかすると、そんな覇気。現状を変えようとする強い気持ちすらも奪われるほど、これまでのブリミル教の支配や系統魔法の抑圧は強かったのかも知れないのだが……。
明らかに彼
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