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蒼き夢の果てに
第7章 聖戦
第167話 ヴァレンタインの夜
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と言うか、少し困ったような笑みを魅せながら、再び彼女の少し伸びて来た前髪をそっと掻き上げてやる俺。
 ほんの少し温かな彼女の肌。其処には確かに生きている彼女が存在している。

「まぁ、そう言うなって」

 まだ色々と決めなければならない事。やらなければならない事があって、気分的にはいっぱいいっぱいなんやから。
 それにそもそも……。

「……俺はこれから先に何処の世界で暮らすのか。それさえも未だ決めていないのだから」

 素直な彼女の髪の毛に触れたまま、そう言葉を締め括る俺。
 もっとも、これではイザベラに言われた優柔不断そのものの状態だと思う。そんなクダラナイ事をイチイチ気にする必要などないし、色々と自由に生きた方が良い……とも思うのだが。
 少なくとも彼女たち二人が俺を拒む事は考えられない。

 ただ……。

 ただ、俺が不器用な生き方しか出来ないのは別に今回の人生に限った事ではないし、その事についてならタバサも良く知っているはず。
 少しの甘えに近い思考。言葉にせずともこのぐらいの事ならば理解してくれているだろう、と言うかなり曖昧な思考で考えを纏めながら、自らや有希とは違う、少し柔らかな手触りの髪の毛を感じ続ける俺。
 そう言えば、前世ではある程度の年齢に成ってから以降は、彼女の髪に触れる事などなかったか……などと言う、少しどうでも良い事を思い出しながら……。
 そう、湖の乙女(有希)が居て、シャルロット(神代万結)が居た以上、地球世界の神々や仙人の思惑。俺の方の事情に彼女まで巻き込む必要はない。そう考えて、前世では意識的に彼女は遠ざけて居たのだが、それでもこうやって次の人生でも強く関わって来た。それもおそらく彼女自身の意志によって関わって来た以上、それが要らぬお節介だった事が今では分かる。
 ……いや、彼女に関しても間違いなくこのクトゥルフ神と地球世界の神々との争いに巻き込まれている。そうでなければ地球世界の魔女の守護者ヘカテーの加護など受けられるはずはない。

「何にしても、貴方は未だ誰も選んでなどいない。その事は理解出来た」

 ならば、未だ私にも可能性は残されている。
 そう意味不明の言葉を口にした後に小さく、ほぼ視線でのみ首肯く彼女。そしてベッドの脇にあるサイドボードの……俺から見るとアンティークのかなり豪華な家具。しかし、このヴェルサルティル宮殿内で使用されている家具と考えるのなら、良く言えば実用的な質実剛健。悪く言うと地味目の家具の引き出しから何かを取り出した。
 それは――
 それは明らかに何らかのプレゼントと思しき、綺麗な紙とリボンに包まれた長方形の箱。地球世界ならば別に珍しくもなんともない代物なのだが、ここは中世ヨーロッパレベルのハルケギニア世界。ましてここは俺の部屋。本来タ
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